泣き笑い道化師

□エアークラッシャーとの放課後
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「なー高倉クンよ。しりとりでもしねえ。」
「ふざけろ。なんで俺が補修受けながらお前としりとりしなきゃいけないんだ。」
「そりゃあ、アレだよ。俺の暇つぶしって言うか」
「今すぐ窓から飛び降りろ。」
「ひっでえ!高倉本当にひっでえ!」
「俺がこんな口叩けるのはお前だけだから許してくれ。」
「え、そうなの?ならしょうがねえか…って許すわけねーだろ!ってか高倉恐いっ。
ぴりぴりしすぎ!」
「…お前、今の状況見てそれをいえるのか…?」
「…あ、ああ。そうっすね、いやわかってる。俺だって『なにが悲しくて野郎二人で居残りなんてさせられなくちゃならねーんだああああぁぁぁ…』って嘆きたくなる気持ちだよ。
けどさあ、そこまで殺気立たなくて良いじゃん!こええよ高倉!!いつになく恐ろしいよその淡々とする様が!」
「黙ってやれ。時間が更に遅くなる。」
「…へーい。しっかし、確かに最悪だなー。今日は帰りにDVD借りに行く予定だったのにー。」
「諦めろ。」
「あー。これでせめて門で可愛い女の子が待っていてくれたら頑張りようもあるんだけどナー。」
「俺ならわかるが、お前はないな。」
「神様!この色男に天罰をッ 一度で良いから女の子に遠目に見られるようにしてください!」
「はっはっは、モテない男はかわいそうだなあ、陽介?」
「もうお前なんて爆発しろ!爆発してアフロになってしまえッ!!」
「残念、アフロになってもモテてしまうのが俺なんだよ。」
「丸刈りにしてやる!…いってえ!本の角はやめてくれって」
「良いからもうとっとと落ち着いて続けろよ、お前が喧しく騒ぎ立てるから俺の手まで止まるだろーが。」
「それ俺のせいじゃなくね?集中できねえ高倉がー…あーもういいです、やろ。とっとと。」

「……」
「……」


「…昔さー。」
「……ああ?」
「ベタな漫画とかでよく麦茶と間違えてめんつゆ飲んだとかあるじゃん?」
「ああ…あったな。」
「俺、マジでアレやった事あるよ。」
「…はっ?」
「小学生の頃なんだけどな、母ちゃんに麦茶何処って聞いて台所にあるからって言われて真っ先に冷蔵庫向かって、ラベルの貼ってないペットボトルみたいなのに入ってた奴をコップに注いで呑んだの。
…ここまで言われたらわかると思うけど、その後はもう悶絶よ。」
「普通、色で気付かないか?」
「気付くわけねーだろ、こっちは喉からからで早く飲みたくて必死だし、大体俺麦茶は濃い方が好きだし。」
「……一応聞くが、味の方は?」
「めんつゆ。いやもうまずいとか上手いとか通り越してただただめんつゆの味。
 漫画のように噴出すことってマジであるのねー。服が口から出ためんつゆでべちゃべちゃになったわ。」
「ご愁傷様。」
「勿論その後母ちゃんに馬鹿って怒られるわ、口の中暫くめんつゆで支配されるわ、散々。
 で、肝心の麦茶はテーブルに置かれてたんだよな。」
「おまっ…馬鹿だろ。本物のッ。」
「しゃーねーじゃん。だって台所って言われてみろよ、普通冷蔵庫に冷やしてあるって思うだろ!?」
「わからなくはないが、回り見ろよ。って言うかなんでペットボトルに入ってたんだ。」
「残り少ない量だったから母ちゃんがそっちに移したんだって。で、次はリンゴジュースで同じ失敗するし、俺」
「…なんとなく想像できるが、どういう失敗したんだリンゴジュースは?」
「状況はまるきりさっきと同じなんだけどな、飲んだのはめんつゆじゃなくてみりん。」
「お前本当に馬鹿だよ。」
「だって似てんじゃん、色がさあ!」

「あー、またこいつの下らない話のせいで時間を無駄にした。」
「じゃ聞くなよ!相槌打ってくんなよ馬鹿!」
「相槌してもしなくてもお前は結局ずうずうしく話して来るだろうが。
 ったく…いいか?俺には可愛い妹と弟が帰りを待っているんだよ。これ以上此処で足止め食らってるわけには行かないんだ。」
「俺だって可愛いハムスターと可愛い金魚がご主人の帰りを今か今かと帰りを待っているんだよ。だから早くかえりてーよ。」
「…お前、とことんなまでに動物好きだな。」
「おう、好きよ!マジ好き。可愛いじゃん、動物!」
「あーこの流れ、また下らない話のスイッチを押したかもしれんな俺」
「まあ聞けよ高倉。この間従兄妹から新居に越すからムササビ飼えなくなったからって言われてさー、チー太郎って名前付けてうちで飼う事にしてさあ!」
「ネーミングセンス…」
「そこで笑うなコノヤロウっ。…そういや外に逃げてったスカンクどうしてんのかな、今。俺でよければ掴まえてやりたいわー。」
「謝礼目当てか?」
「やな事言うなよ、可哀想ってな意味に決まってんだろがッ。」
「お前からそんな言葉が出ると少し気持ち悪いな。」
「どういう意味だよソレ!?…あーもういいや、俺は気分を害しました。さっさとこれ終えてマッハでうちに帰ってやる。」
「DVDは?」
「明日でいいや。兎に角可愛い奴等の顔を見て癒されたい。動物はいいぜ、マジ。」
「ふうん…そうでもないけどな。」
「すっげえドライな事を…あれ?高倉んち、動物飼ってんのか?」
「ん?何でだ。」
「だって今の言葉遣い、飼ってるっぽくねかった?」
「考えすぎだろ。うちにはそんな余裕ない。」
「…あ、そー………。
 高倉、今度俺のうち来る?あ、妹ちゃんと弟くんも連れてきて良いからさ、大人しめの動物見せてやるよ。」
「いらん。そもそも陽毬も晶馬もそんな事してる予定がない。」
「…さいですか。」
「まあ、お前さえよければ俺だけなら行ってやるがな。」
「……最初から素直にそういえよー。」
「黙れ。さて、…俺はもう終わるけど、お前は?」
「あ!?ちょ…いつの間にッ!??え、待て待てッちょ…俺も急ぐからマジ待て!!!ストップオンリー!」
「ノー。」
「こっちがノオオォオオ!!」
「…なあ、陽介。今度は俺が下らない話をしてやろうか?」

◆つまらない補修も下らない誰かのせいでなんとかなったんだ

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