ひばやま

□雨宿り
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今日は一日中強い雨が降り止まない。
にもかかわらず、山本は部屋の窓から外を眺め続けている
別に雨が降り止む事を期待して待っている訳ではないけれど、
ただ、雨が降る音や、屋根から落ちる雫の音がとても心地良くて、何となく耳を傾けて居たくなる、気がする
降り止む気配は一切ない
天気予報では確か、“今日は雲一つ無い晴天です”だとか言っていた気がする
その言葉を裏切るような雨はまだまだ降り続けるだろう

外には人一人居ない
「なんか…暇だよなー」
誰とも無く呟いた時
一人の人間が目に映った
(あれって…雲雀?)
そこには傘もささず、雨宿りをしている雲雀がいた
山本は慌てて玄関に飛び出すと、真横に雲雀がいた
「何やってんだよ雲雀!傘もささねーで」
「仕方ないでしょ傘持ってないんだから」
「えっと…とりあえずウチあがるか?」
「…お言葉に甘えようか」
「えっとタオル持ってくっからそこで待ってて!」
「…はいはい」
バタバタバタ…
慌ただしく聞こえる足音に雲雀は小さく笑う
「ほい!タオル!」
タオルを数枚持ってきた山本からタオルを受け取り、とりあえず髪をふく
「にしても、何で傘さしてなかったんだよ」
「だから、傘なんて持ってないって言ったでしょ」
「何で持ってねーの?」
「必要ないよ」
キッパリ言い切る雲雀に山本は、雲雀らしーなと笑った
「でも風邪ひくぜ?」
「じゃあ、君が傘さしてよ」
「え?」
「僕は傘なんて必要ないけど、君が風邪ひくからさせって言うなら、君がさしてよ」
「傘が欲しいなら一本やるぜ?」
イマイチ会話がズレているのだが、雲雀は気にせず続ける
「そもそも、僕は風邪なんて…」
「でも、前に風邪ひいて病院に入院してたじゃねーか」
「………」
「なっ、傘はさしたほうがいいって」
「仕方ないね、でも君が近くにいるときは君の傘に入るから」
「あぁ、いーぜ」
そこで、山本は思い付いたように
「あっ、もうちょっとで親父が帰ってくるから飯食ってくか?」
「いただいていくよ」
そこでもう夜なのだなと思い出す

雨はまだ止みそうもない
でもきっと次はずぶ濡れになることもないだろう

傘の心配はいらなさそうだ

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