ひばやま

□春がきたよ
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バタバタと、大きな足音をたてながら、こちらに向かってくる人物が誰なのか、姿を雲雀は見なくても理解した。

(…またか)
そう思うのと同時に、これまたバタン!と、大きな音をたてて応接室の扉を開いた。(いつか壊れるんじゃない?)

「ヒバリ!」
「…山本武。君ねぇ、ノックくらいしたら、」
「これこれ!」
どうなの?と言葉を言い切る前に、山本に遮られてしまった。
その事に呆れつつ、やけに嬉しそうな様子の山本に
「何?」
疑問を一言。
すると、じゃーんと、(よく解らない)効果音を口にしながら、雲雀に見せたのは、
「桜?」
一本の桜の枝だった。


「これさぁ、今日グラウンドに桜が咲いててさ、もう春だなぁと思って。そんで、雲雀にも見せたいなーって」

「…」
山本の手の中にある花を見つつ、少し顔をしかめた。その様子に気付いた山本が、
「え、桜嫌いだった?」
と不安そうに聞いてきた
「嫌いじゃないよ」
正しくいえば、桜は好きだ。
ただ、頭に過ぎる
あのパイナップル頭に訳の解らない病気のせいとはいえ、敗北した経験が。
それが、無性に腹立たしくなる。と、いうのが顔を少ししかめた理由だ。

先ほどの返答に安心したらしい。
「なぁ、雲雀。これここに飾っていいか?」
山本が部屋にあった花瓶を手にしていた。
「…かまわないよ」
そう言うと、山本は嬉しそうに空の花瓶に、持っていた桜の枝をさした

ほのかに香る桜の香りに、
もう春だな、と思った。

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