ひばやま
□I feel you
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※由季那様へ
何度考えてみたとしても、結論は同じ
“I feel you”
(くだらない)
と雲雀恭弥は思う。
そもそも、愛やら恋やらを語る事自体、柄に合わない。
そう考えて、ふいに横いる存在に視線を向ける。規則正しい寝息をたてて寝ている彼は、どうやら仕事で相当疲れていたようで、布団に潜り込み、直ぐに寝入ってしまった。
そんな姿に、少々呆れながらも、雲雀も布団に入り込んだ。
恋や、愛があまりよく解らないというのが雲雀の本心だった。
実際、山本とこうして一緒に居ることは嫌いではない。(というか、嫌いなら同じ空間に居るだけで嫌気がさす)ただ、それが“好き”ということになるかが、解らないだけ。
世間一般の考えでは、きっと“好き”の部類に当て嵌まるであろう。ただ、雲雀にはよく解らない
(…本当に、)
くだらない
雲雀は(山本的には)珍しいため息を、一つ
わざわざ、感情の一つ一つに、名前を付ける必要があるのだろうかと、疑問にすらなりかけていた、時
「…ひば、り」
寝言がひとつ、
「…」
その、零れ落ちた言葉に、
むにっ
鼻を、つまんでみた
急に、呼吸がしづらくなったのか、少し眉根を寄せた。その反応が面白かったので、もう少し強めに摘んでみれば
「…ひびゃり?」
と、眠たそうに目を少し開き、不思議そうに、雲雀を見た。
「どーした?」
「君は、どうなの?」
問われた言葉に、問いで返した。
一瞬訳が解らなそうにしていたが、直ぐに
「好きだぜ」
告げられた返事に、満足そうに雲雀は口角を緩く吊り上げた。
「…そう、おやすみ」
「おやすみ」
山本も幸せそうに笑い、
眠りに落ちた。
そこで、
(やっぱりね)
と雲雀は思った。
きっと、自分が彼に向けているものは、世間一般でいう恋であり、愛だ。
山本が自分に向けているのも紛れも無い、それだ。
けれど、少し自分にはよく解らないので、
ただ、君を、想っている、そういうことにしておこう。