tns(book)
□オレンジ
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「ほな、次の質問や」
そう言ってにこっと笑った白石くん。机一つ挟んだだけのいつもより近いその距離に心臓がはねた。
放課後の教室はもう誰も残ってなくて、そのことが更にドキドキを加速させる。
お願いだからその無駄に輝いた笑顔のまま私を見ないで。これ以上は私の心臓がもちそうにないから。
なんて私の切実な願いは白石くんに届くはずもなく、質問が続けられる。
さっきから聞かれるのは私の好きなものばかりで、理由は教えてくれないのについ質問に答えてしまう。
私の事なんか知ってどうするんだろ?まぁ、相手が白石くんだから心配はないのだけど
「好きな色は?」とか「好きな音楽は?」とかそんな事を聞かれてそこから話しが盛り上がったり、話しが広がったりする
こんなに白石くんと話したのは初めてで、きがつけば時間もたち、教室はオレンジ色に染まりつつあった。
「そんじゃ、次で最後や」
空に向いていた意識が白石くんへと戻される。そうだ、次で最後なんだ。付き合ってるわけじゃないから当然一緒に帰るなんてできないし、そんなこと言える勇気もない。
いつもそれが当たり前なのに、今日はその当たり前がすごく寂しく感じて。それでも白石くんとの距離がちょっとだけ近づいた気がするのがとても嬉しい。
だからこそ、
「最後の質問…」
「xxxの好きな人は?」
だからこそ急に名前で呼んだり、こんなこと聞くのは不意打ちだと思うんだ。
おかげでさっきから心臓がうるさい。
「好きな人のことやからなぁ、気になってしゃあないねん。」
そう言って笑う白石くんはとても自信あり気だった。
なんだ、私が彼を好きなことなんてとっくに気づかれてる
あぁ、もう。
誰かこのうるさい心臓をとめて
「私も気になってるよ? 白石くんの好きな人。」
「へぇー、そうなん?」
xxxやったら教えたってもえぇよ、なんてわざとらしく首を傾げる白石くんは本当にずるい。
わかっててやるから尚更だ
さて、それじゃそろそろ
伝えるとしようか。
この気持ちを、
「白石くんが好き。」
「xxxが好きや。」
二人の言葉がオレンジ色の教室で重なった。
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