さんにんのゆくえ

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皇冥学園に行く、と決めた瞬間から待っていたのは勉強勉強勉強。
ランクを落として平均にかなり偏差値は近付いているのだが、それでも俺はかなり必死に勉強をした。

ただし!これは覚えてほしい。

俺は馬鹿ではないと言えるだけの学力はあるし、今の中学校でも中の上にはいる。だけど俺は重度の心配性だったもんだから、鶴斗に引かれるくらいに勉強した。おかげで成績も少しupして、母さんは小躍りしていた。…正直引いた。

そして中三の冬休み、俺と鶴斗と母さんで皇冥学園へ行った。ひと足先に、受験をするためだ。
今回のこの制度はまだまだ試験的段階。お金の問題や学力の程度。調整することは沢山あるからと、理事長さん(イケメンだった…イイね!)は苦笑しながら言った。


さて。
受験結果は自分の目の前で理事長さんが発表してくれた。


合格。


それを聞いた瞬間、隣にいた鶴斗と抱き合った。嬉しい、ただただそう強く感じた。
そしてしばらくの間、母さんと入学費などに関する話し合いをするらしいので、俺と鶴斗は食堂に行こう、ということになった。


「……つーか、怒涛の展開過ぎて乙女の方々はついて来れてらっしゃるんだろうか…」
「?なに言ってんだよ、モモ」
「ひ、と、り、ご、と」
「ふーん。………あ、ほらモモ、あれが食堂な」


長く歩いた先には、食堂…て、いうかフードコート。凄く広いもんで、思わずすげー、と呟いてしまった。
冬休み中なのだが、結構な数の生徒がいるようで、がやがやと心地良い喧騒に包まれていた。
鶴斗に手を引かれて中に入る。その瞬間、食堂が一瞬静まり返った。俺は思わず小声で鶴斗に聞いた。


「…な、なに、この静けさ、なに、この突き刺さるような視線んん!!」
「俺とか生徒会とか、風紀委員が冬休み学園にいること少ねーし?それに俺、イケメンだから!」
「ウザ!そしてウザ!」
「あっはっはっ」


鶴斗がいつものように笑う。その瞬間、


「「「キャーー!!」」」
「…あの『仮面王子』が笑った…?!」
「つか誰だあいつ」
「制服違うよ…伊原様と手繋いでるしっ」


がやがやがやっ!一気に大音量の声、声、声。俺は思わず顔をしかめた。というかさっき聞こえた『仮面王子』ってなんなんだ、ギャグか、ギャグなのか。
どうしてもそのギャグチック、むしろ王道チックな名前が気になって、俺は近くの椅子に腰掛けた鶴斗に聞いた。


「なー、鶴斗」
「ん?」
「『仮面王子』って何かのギャグ?ある意味ハイセンスなんだが」
「っぶー!!」


いきなり吹く鶴斗。うわ、汚ェなぁオイ。
そんな蔑みを含んだ目で鶴斗を見ると、テーブルに突っ伏して震えている。
しばらくはほっといたが、いい加減面倒臭くなったのでグーを作って鶴斗の頭に降ろした。


「ヲイ。」
「あだっ!…んだよ」
「だから、なんなんだよ、『仮面王子』」
「俺の呼び名だよ。ここだと俺、出来るだけ無表情だからさ」
「…あー、だから表情筋が毎回会う度に引きつってたのか」
「そーゆうこと。あ、ここ学食は」
「タッチパネル式、だろ?」


ニヤリ、と俺は笑った。
それくらい知っているさ。なぜならここは王道学園だから!
かなり不純で説明しろと言われたら困る理由だが鶴斗は気にせずにタッチパネルの簡単な説明を始めた。

鶴斗に教えてもらった通りにタッチパネルを操作して、俺はざるそばを選んだ。
向かいでタッチパネルを操作している鶴斗は、どうやらオムライスを頼んだようである。…ギャップ萌えか、ギャップ萌えを狙ってんのかあんたは。


俺は周りをゆっくりと観察した。
やはり鶴斗の人気はすごいらしく、あちこちできゃいきゃいチワワちゃん達(♂)が騒いでいる。…うへ、可愛い。うん、鶴斗は早くチワワちゃん(♂)の誰かとフォーリンラブでウフフアハハでイヤーンでアハーンなことしてるといいよ!!あ、俺はニヨニヨしながらガン見してます。生徒会書記×チワワ、あ、いや生徒会書記×ノンケ不良もいーかもなぁ。いやはや、妄想が膨らむ膨らむ。


「お待たせしました」
「あ、あざーす」
「いつもありがとうございます」


さてはて。


「いただきやす!」
「…毎度毎度その言い方なんとかなんねーの?モモ」


癖なんだから仕方ないじゃん。



11,03,02





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