さんにんのゆくえ

□24
1ページ/1ページ







「伊原チャンは?」
「あー…ちょっと買い物に…待ちますか?アイツのこと」
「どうしよ〜かな…」
「つか、今からお好み焼きパーチーするんですけど、鳳凰寺先輩もどうですか?」
「(パーチー…?)お好み焼き好き〜。じゃあ遠慮なく上がらせてもらうネ」


シンプルな黒いVネックの七分丈に藍色のジーンズという私服姿の鳳凰寺先輩はそりゃもう目が潰れんばかりに光っていた。クソ…イケメンめ。シンプルな物着てもぴったり似合うって何事だオイ。

リビングまで行くと、竜騎がパソコンをカタカタと叩いていた。俺がリビングを出てまた帰って来るまでの約5分の間にパソコンを起動させて文章を打ち込んでいるとは…。ある意味素晴らしい。ある意味(←ここ重要)。


「あり?利人先輩?」
「昨日ぶり〜、竜騎チャン。お邪魔するネ」
「どーぞどーぞ、汚い所ですが」
「あは、ココ伊原チャンの部屋なのに竜騎チャン通い妻っぽ〜い」


ゼェハァ通い妻ゼェハァ。表では不良で男前な彼が愛しの恋人の部屋では可愛らしい料理上手の通い妻ァァァアアア!!…なんて妄想が一秒の間に駆け抜けた。流石だ俺、いつでもどこでも妄想力は最強の名に等しいぜヒャッフゥウ!
そんな感じに意識を危ない方向に飛ばしていた俺の目の前で鳳凰寺先輩がパン、と手を叩き、俺は戻ってきた(主に妄想の世界から)。


「っは!」
「危ない危ない。桃耶チャンが遠い所に行っちゃうトコだった…。あ、座っていい〜?」
「どぞ。俺の隣、あいてますよ!利人先輩と話してェこと沢山あるんス!」
「わ〜い」
「あ、ちょ、俺も混ぜてよ」


竜騎の打っていたのは案の定BL小説だったようで、彼のサイトで一番人気の連載『花散らす』のヤクザ×貧乏大学生を書いている途中だった。
俺が最近更新の催促をしているので(催促についての批判は甘んじて受け入れるが、俺だって竜騎に妄想対象にされているのでどっこいどっこいだと思う!)、ここ最近毎日更新されている。嬉しい。


「あ…もしかして、竜騎チャンって『空の向こう』の管理人?」
「はい、そっスよ」
「俺、相互サイトの『境界線69』の管理人のLTだよ〜」

「「マ ジ す か」」


『境界線69』とは、繊細な文章表現方法が売り(?)のファンタジーを中心とするBLサイトである。最近完結した長編の『nine』は感動した。あれは素晴らしい。
そんな神サイトの管理人が鳳凰寺先輩だったとは…つか、竜騎は知らなかったのか。

鳳凰寺先輩はクスッと笑い、携帯をポケットから取り出した。


「ネ、これもきっと何かの縁だよ〜。どう?俺達三人でリレー小説でも書かない?」
「あ、いっスね!舞台はどうしますか?」
「…って待て待て待て。ヘイ竜騎さん、俺文章そんな書いたことないんだけど」
「イケるイケる。利人先輩、ノリノリだし」
「やろ〜よ〜?」
「……う、うあ…」


二人に迫られている時、玄関から音がした。二人分の靴音。鶴斗と武流が帰って来たようだ。俺は玄関に走った。


「あ、モモ…っぐぇ」
「助けやがれー鶴斗ー!」
「いやむしろその胴回りをきつく締め付ける腕から俺を助けて!」


二人も帰って来たことだし、さあ、お好み焼きパーチーしようぜ!



11,07,28





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ