さんにんのゆくえ2

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竜騎が体育館へと向かってから十分経過。
何かあったんじゃねぇかと少しドキドキし始めた頃、やっと竜騎が顔を出してきた。


「…行くか」
「だな」
「早く終わんねぇかなぁ、コレ…」
「お前の後輩はもう終わってんぞ赤崎」
「…死ねばいい」
「赤崎先輩酷くないスか?!」


愚痴をこぼしながら体育館入り口で佇む竜騎に目をやると、なんだかトライアスロン五、六回やりきったような顔をしている。まぁつまりはかなり疲れてるみたいだよねって話なのだが。


「どうした竜騎、」
「いやさぁ…」


ちらりと体育館倉庫に目をやる竜騎。その方向から、なんだか騒々しい声が聞こえる。聞いたことのある声…、うん、なんだか俺もいやな予感がしてきた。


「あ!竜騎、お前の友達か?!俺柿本愛斗!!愛斗って呼んでくれよ!!」
「…」
「愛斗、そんな奴らの近くに行くなよ」


…其処にいたのは、王道くんとスポ薦イケメン名島扇、そしてはぐれ狼(ココ笑うとこ)のチカこと長宗我部親也だった。






「…なぁチカ、とりあえずお前大丈夫か」
「おう。怪我なんかしてねぇよ。不破は?」
「俺はヘッドがいるからな」


コソコソとミニ会議。チカは相変わらず『はぐれ狼』の名に恥じない((ココ笑うとこ))ぼっち振りを発揮していた。未だにAクラスでの友達が愛斗と扇の二人しかいないだと?面白すぎて腹筋割れるわ。…いや、それくらいじゃ割れないけどさ。
ちなみに言っておくと、うちの学園の高等部は文系選択三十人と理系選択三十人を合わせた六十人で一クラスという構成になっている。これでどれだけチカがぼっちなのか少しは理解して頂けただろうか。


「まぁでもよ、良かった。」
「…、」
「お前に友達が二人も出来たしな。俺、嬉しいよ…これでもう、俺の助けはいらない…か、な」
「…!?」
「あ、ちょ、涙目になんなっつーの」


悲しそうに唇を噛み締めるチカに、慌てて手を伸ばす。けれどその手は、王道くんによって払われた。


「お前、俺の親友泣かせるなよ!最低だな!!」
「うるさいな、ビンもじゃ」
「あっ、お前もしかして友達が欲しくてそんなことしてんのか?!だったら俺がなってやるよ!お前名前は?」
「めんどいから教えない。つか、自分がいつも正しいと思ったら大間違いだ。もう少し頭使いな」


そんな俺の態度にイラッときたのかは分からないけれど、名島扇が王道くんを引き連れて何処かへと消えてしまった。


「…チカはいかねーの?」
「あぁ。こっちの方が過ごしやすいし、やっぱり…あ、と。はじめまして」
「えーと…長宗我部?だよな。俺は赤崎」
「そんでチカ、後ろの優男眼鏡が黒駒、黒髪つり目が鳳凰寺。二人とも俺と赤崎の部活の後輩」


よろしく、とペコンと頭を下げるチカの頭をぐしゃぐしゃと掻き回しながら後輩二人に目をやると、なんだか驚いたような顔をしていた。理由を聞けばなんのことは無くて、強面不良のチカがこんな奴だとは思わなかったそうな。まぁ、普通は思わないだろうけれど、チカは知り合えば、触れ合えば、その内面が見えてくる。

知らないだけで、こんなにも。けれど一度知ってしまえば、ほら。すぐに価値観は変わって行くのだ。それはあの王道くんやうちの会長や親衛隊の人々にだって言えるのだけど。…まぁ、奴らの場合はそれ以前の問題で、ただ単に俺が苦手な性格をしてるっつー訳だからなぁ…。


「うし、自己紹介も終わったし、ここでしばらく休憩な」
「あいさー。あと時間は…まあ二十分位か?あ、つーかチカは大丈夫なのか?」
「うん…、アイツ等と合流したの、みんなが入ってくるちょい前くらいだったしな」
「そうそう。チカが入って来てくれたおかげで、俺はお前らを呼びに行けたんだよ…。やっぱり俺は王道苦手だわ」


竜騎が疲れ切った顔をしていたのは、十割方王道くんのせいであった。まぁ妥当っしょ。どうやら王道くん、権力のあるイケメンを中心に声掛けてるしな。生徒会はもちろん、竜騎だって二年のヘッドで学級委員なのだから、当たり前田のクラッカーと言ったとこだろうか。まぁ竜騎に関して…いや、『委員会』所属に関して言えば、中立NO,2の《学級委員会委員長》に色々縛られている為、権力なんて無いに等しいのだけれど。

なんて考えていたら、





「アラ、先客?」





…本当に『学級委員会委員長』が来てしまったわけで。



11,12,19





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