さんにんのゆくえ2

□54
1ページ/1ページ







まあ、あっという間に一週間なんて経つもので。

体育祭である。






「こりゃまた今年も…派手なのな」
「まぁ俺は副団長ですから!」


漆黒にはためく長い特攻服には、これまた黒い糸で桜と流水の日本刺繍が施されている。竜騎は俺達黒組の副団長。上から数えて二番目の位についている。


うちの体育祭は、少し…いや、かなり変わっている。
まず、組の色は赤、白、そして黒。この三つである。各学年が二クラスごとに三つの組のどれかに割り振られるのだ。まぁそこまでは普通の高校と変わりは…ないはず。

問題はここから。種目はたったの三つだけ。応援合戦と騎馬戦、そして敵引き抜き戦。前の二つは普通に行われるけれど、最後の敵引き抜き戦は、かなり特殊だ。
そのルールは、体育祭終了までに他の組からどれだけ此方の組に引き抜くか。それだけなのだが、これが結構厄介なのである。例えば、人気のある男子が固まる組があるとしよう。もちろん人気だから、チワワちゃん達はそちらに引き寄せられていく。その分人気者のいる組には人数が増えるのだ。


「竜騎は格好良いから、きっといっぱい集まるよ」
「ん、ありがとうな!」


ぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜられながら、今回だけ黒く染められた竜騎を見つめる。彼の茶色い髪の毛は地毛なのだが、黒い髪の毛というのもよく似合っている。イケメン!マジイケメン!でも腐男子っていうギャップが萌える。そんな趣味が風紀委員長にバレたりして弱み握られてあんなコトやこんなコトされたらいいよ!…いや、日之本風紀委員長コイツの趣味知ってんだけどな。んでもって俺の趣味もあのひとに筒抜けなんだけどな。


「今回の団長は日之本先輩か…」
「楽しくなりそうだなー…あ、お前ら赤なんて抜けて黒に入らねェか?ん?」


自分の横を通っていくチワワちゃん達に次々と声を掛けていく竜騎。ニヤリと笑う彼は本当に男前で…うん、ぷまいです。


「…やっぱり俺、竜騎大好きだわ」
「俺も桃耶が大好きだぞー」

「不破さん!!」

「…うん、幻聴が聞こえるなぁ」
「そーだなぁ…年かな?」

「不破さんってば!」

「やっだー竜騎さん年だなんてフフフ」
「そうねやだアタシったらホホホ」


「…ッッ海原ァア!!不破さんから離れろやぁぁあ!!!」


「うるっせーよ久佐利!!聞こえてるわ馬鹿が!!!」


…今回、面白いくらいにEクラスが黒組に揃ってしまったのだ。ちなみに、黒組のクラス編成は一年がDクラスとEクラス、二年がBクラスとEクラス、三年がCクラスとEクラスになっており、団長は勿論のこと日之本先輩で、副団長が竜騎、そしてNo,3の特攻隊長が…


「俺マジで不破さんと同じ組になれて良かったッス!」
「はいはいはいはい良かったデスネ。お前うるせえよマジで」


前にも話したことがあっただろうが、多分忘れている方々のほうが大多数だと思うので、今一度説明をば。
このうるさい男の名前を久佐利朔馬(くさりさくま)と言う。一年Eクラスのボスで、容姿はスキンヘッドのよく似合う強面である。
俺は高校一年生の頃、彼とまぁ…色々、ありまして(詳しくはまた今度話すとしよう)。俺は結論からいえば、彼に懐かれた。


「冷たいところもしびれるッスー!」
「はいはいはいはい」


そりゃもう尋常じゃないくらい懐かれた。


「朔ー、日之本先輩が呼んで…ってアレ、不破先輩?」
「鹿月じゃん。久佐利と知り合い?」
「えっつんは俺の従兄弟ッス!」
「どうしようたぎってきた」
「…コラ」


言いたいことは沢山あるけど、今一番叫びたいのは鹿月がおいしいってことだ。

さーて、面白くなりそうだ。



12,02,22





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ