さんにんのゆくえ2

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ぱち、と目を覚ますと、此花は携帯をムニムニいじっていた。


「なーに見てんの?此花」
「ん?んー…企業秘密」
「なんだよー教えろよー…あ、そろそろ戻る?」
「おう。ちょっち待ってて、カツラ整えるから…っと」


どこからか櫛を取り出して、ササッと髪をとかし始める此花。クッソ、イケメンは身だしなみにも気を配るからイケメンなのか…!?そういえば竜騎も毎日鏡を持ち歩いている。しかし彼の場合、その鏡を使って喧嘩したりベーコンレタスを覗き見したりしているから、多分彼は違うんだろう。というか同列に考えたりしたら此花に失礼だ。
いつの間にか『柿本愛斗』になった此花。俺は立ち上がって手を彼の方に差し出した。


「…?」
「手、繋ごーぜ!」
「いーけど…なぜゆえに」
「何となく。ヘイレッツラゴー!」
「お、おー?」


おずおずと出された此花の手を掴んで、ぶんぶん振り回しながら自陣まで戻る。草陰をでた瞬間、此花は『柿本愛斗』の明るさで話しかけてくる。


「あ、竜騎ー!」
「よー!遊びに来たぜ!」
「…っあー…、桃耶?」
「捕まえてきた。これで俺もチームに貢献したろ?」
「…ちょっと来なさい」
「?うん」


頭を抱えた竜騎の傍まで行くと、小声で囁かれた。


「危ないことすんなっつの!お前悪目立ちしてんぞ」
「知ってる。手ェ繋いでたしな」
「分かってたならなんで手を離すなり距離置くなりしなかったんだよ」
「…愛斗、一人で寂しそうだったからな。ごめん迷惑かけて。でも、アイツは接し方さえ分かりゃあ話しやすいしいい子だよ」
「………ったく、お前は」


頭を軽く小突かれて、信用するからな、と竜騎は言って去って行った。


「……やっぱり俺、戻るか?」
「大丈夫、此花アソコヤなんだろ?いなよ」
「…うん!ありがとうな!!」


思い切り抱きつかれ、よろける俺。少し頼りない俺だけど、こいつは俺を頼ってきてくれた。それって、凄く素晴らしいことなんだと俺は思う。
自陣は大きなテントの下にパイプ椅子を並べているもので、席は自由に使える。俺達はそこの一番前に座って応援合戦を見ることにした。






「カッコ良かったな!竜騎!!」
「…ああ」
「俺もそう思うよ。でもまさか九道がセーラー服着てるとは思わなかった」
「それにはもう触れないでくれるか?不破…つか、その横のモジャメガネって鬼ごっこの時のウザメガネか」
「なんだよ!お前ムカつくな!俺は愛斗って名前があるんだよ!お前名前は?!」
「(ゆ、勇者や、此花勇者やった)」


応援合戦は惜しくも負けとなった。勝ったのは生徒会長率いる白組。いやあ、鳳凰寺先輩白ラン似合いすぎでした。
黒組の応援は奇想天外だった。まず、Eクラスの筋肉バカ共がセーラー服で登場して、応援をし始める。俺はここで吹いた。暫くしてからイケメン組が出てきて、応援の大合奏。これはとても圧倒的だった。元々体格の良い人間が多いためか、声が三つの中では一番大きかったように感じられる。そして。


「いやー、綺麗だったよ、九道。一人で走ってきてからのあのマイクさばき!格好良いやら綺麗やら…惚れかけた」
「マジで?あれむっちゃハズかったんだぜ?」


あの時の歓声は忘れられない。チワワの黄色い歓声、体育会系男子共の野太い叫び声。あれで九道にまた新しいファンがついたに違いない。
美味しい展開に合掌していると、俺に此花が抱きついてきた。


「桃耶っ!俺の相手もしろよ!」
「ごめんごめん。愛斗、何?」
「「……」」


うう、二人からの視線が痛い。
なんとなしに此花の方を向くと、


「っ!?」
「だああああ゛??!」
「…あ、愛斗?」


此花と俺の唇がこんにちはした。衝撃が強過ぎて固まる俺に、此花はそっと呟いた。


「…生徒会の奴ら全員おびき寄せたかったから、ごめんな」


意味が分かりません。



12,04,29





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