僕は君が理解できない

□19
1ページ/1ページ







湧井日向が何者かの手によって眠らされている頃、ひとつの影が学園に伸びた。


「…さて、と」


行きましょうか。





僕は君が理解できない





目を開けて最初に視界に移ったものは、暗い暗い天井だった。ここは何処なんだろうと、半ば覚醒し切れていない脳を動かす。起き上がろうとするが、そこで初めて自分の両手両足が縄によって拘束されていることを知る。一体、なんなんだ。


「お、起きた起きた」
「…っ、…!……?!」


誰だ。そう叫ぼうとしたのに、声がでない。なんだかいやな予感がして、自分の右手の指を動かしたのに、僕の指はぴくりとも動くことはなかった。動くことが、逃げるという動作が出来ないということが、僕の恐怖心をことさら煽った。


「まァ今分かったと思うけどさ、軽い弛緩性の薬飲ませたから。…逃げれないぜ?ワクイヒナタ」


そいつはクツクツと笑いながら、僕に近づいてきて、


「っ?!」


僕の腹を蹴り上げた。
痛みが僕の腹からじくじく広がっていき、じんわりと熱を持つ。痛い。僕はろくな抵抗も出来ないままに、その男に幾ばくか蹴られ続けた。
しばらくして、その男が僕の頭を鷲掴む。髪の毛が何本か抜ける音がした。


「お前も可哀想になァ?"金獅子"なんかに関わらなきゃ、こんなに痛めつけられることなかったのによ」
「…、」
「いやまったく!お前は一番の被害者ってことか!」


"金獅子"?なんだそれ、僕は知らない。もしかして僕は勘違いの末にこんな目に合っているのか。というか知らないうちに自己完結して話を終わらせるな、僕に僕を蹴る理由をちゃんと教えてくれ。色々な感情、思いが渦を巻き混沌とした思考が僕を支配する。
顔にもまったく分からないと出ていたのか、その男がニヤリと笑った。


「分からねェようだから教えてやるよ、金獅子はカミナガショウタロウ!テメェにとってはトモダチだよ!」
「…、…?」
「まったくあいつにゃあ殺意しか湧かねェ、今回の奇襲にもいち早く気付きやがって駒共をだいぶ減らされた…」


少しぼやいた後、男は僕の頭をぽい、と投げた。ガン、と床に頭がぶつかる。


「好きにヤれ」


そう男が言ったとたん、僕の縄が解かれる感触がした。なんで、と疑問が頭を巡ったが理由はすぐに理解出来た。

服を思い切り破られたのだ。


「ワクイヒナタ、テメェ金獅子の女なんだろ?最初はキモチワリィと思ったが…見てみりゃ結構イケるツラしてやがる」
「…!……!!」
「金獅子はお前がマワされてる姿を見てどう思うかなァ?」


数人の男が、僕の腕を、足を、押さえつける。弛緩性の薬が弱まってきて、僕が少しだけ動こうとすることすら、禁止するかのように。
やめろ、離せ、お前らおかしい。













「ねー?
…………ナニ、してくれてんのかな?」


聞こえるはずのない、声が聞こえた気がしたんだ。



11,04,05





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ