僕は君が理解できない

□25
1ページ/1ページ







少し調子の外れたチャイムが鳴り響いて、ガタガタと生徒達も座る。


「おはよーざーす。今日は転入生が来る都合上いつもより早めに来てみましたよっと」


かったるそうな口振りで、我らが担任の池田保(いけだたもつ)先生が煙草をふかした。池田先生には双子の兄がいるらしく、彼も教鞭を取っているそうだ。


「なーヒナ、誰だろな、転入生」
「いや…僕なんかが知るわけ無いだろ、」


横目で神永を見ながら、どんな奴が来るのだろうと僕は考えていたのだが、


「じゃ、入れー」


入ってきた人物に、僕は頭を抱えることとなった。



僕は君が理解できない



ガラッ、とスライド式のドアを開けて入ってきたのは、長身の男だった。長めのダークブラウンの髪が歩くたびに揺れて、彼のセピア色をした目を見え隠れさせている。
結論を言ってしまえば、彼は神永に負けず劣らずのイケメンだったのだ。


…て、いうか、僕コイツ知ってるぞ。


「はじめまして、村崎玖巳(むらさきぐみ)で………っ、」


やべ、目があった。


「村崎はドイツからの帰国子女で、英語とドイツ語は得意だそうだから、英語ヤベーな、とかいう奴は教えてもらえー。で、村崎、お前の席」
「日向ちゃーーーん!!!!」
「わ、ちょ、僕に近づくなぁぁあ!」
「ッテメェヒナに触ってンじゃねぇぇえ!」


教室は騒然とした。






昼休み。
普段は結構人がいるはずの屋上には僕と神永と将、そして転入生の村崎玖巳だけしかいなかった。理由としては至極簡単で、神永が先程までいた生徒達をひと睨みで追い出したのだ。


「で?!誰なのその髪の毛サラ男は!!」


美しい眦を吊り上げて、転入生を睨みつける神永。凄く迫力があるものだから、思わず一番近くにいた将のYシャツにしっかとしがみついた。将は僕を安心させるように背中をポンと叩いてくれたので、やはり将という存在は僕の最後の砦だと思う。
将がため息混じりに神永に話す。


「ソイツ…グミは、俺と日向の幼なじみだったんだよ」
「グミくん小学生の頃にドイツいっちゃったんだけどね…」
「そしてボクってば日向ちゃんの恋び」

「「それはねーよ。」」


呆然とする神永だったけれど、僕は神永の珍しい呆け顔を見ることができて、なんだか得した気分だった。



11,08,09





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ