緋月
□色
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※鉢→くく ぐらい
※会話文のみ
「なぁ兵助」
「ん?」
「好きな色ってあるか?」
「はぁ?何だよいきなり」
「いや、ただ何となくさ」
「んー…好きな色…そうだな黒、とか?」
「黒?白じゃなくてか?」
「…何で白が出てくるんだ?豆腐が好きだからとか言ったら殴るぞ」
「何だ分かってるじゃないか」
「お前な…」
「冗談だ、冗談。で?何で黒が好きなんだ?」
「……そうだな…他の色に影響されにくいから、かな」
「は?」
「だってさ、例えば今の空の青と黒、同じ量を混ぜても黒は青くならない。でもその青とそうだな…あの葉みたいな緑を混ぜれば色は青とも緑ともつかない色になってしまう」
「………だが黒だって青くならなかったとしても色は変わるぞ」
「青っぽい黒に?」
「……変わるだろ?」
「…いいんだよ。それでも。…俺は誰かに影響されて生きて行くのだけは御免だからな。弱い色には染まらない」
「………」
「でも…」
「…何だ?」
「でも、黒をまったく違う色へと変えれるような色があったらそれはそれで良いと思う」
「…お前がお前でなくなるんだぞ?」
「…自分がそれほど好きなら構わないよ。それに自分で選んだ人ならそれは自分の意志、だろ?」
「………」
「…っていうか何だよ。色の話じゃなかったのか?」
「兵助」
「ん?何?」
「遠慮なんてもうしない」
「…さぶろう?」
「私はもう、遠慮なんかしないからな」
そう、お前をいつか私の色に染めてやる。
それこそお前を黒じゃない色にしてやるよ。
end.