エメラルド
□一秒でも長く
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俺はあいつが気に食わない。
俺のたった1つ上の、……いや
されど1つ上と言ったほうがいいのか。
先輩であって先輩と呼ぶことないのない先輩。
目立つ赤茶の髪に、あのムカつくべらめェ口調。
とにかく俺はあいつが気に食わない。
富松 作兵衛…………
今日は、俺たち二学年と1つ上つまりはあいつのいる三学年との合同演習がある。
俺自身あまり乗り気ではなかったが、理由もなしに休むことなどできるはずもなく、仕方がなしに集合場所【裏裏山の麓】へと向かう。
集合場所に着くと、二学年・三学年と共に皆が揃っており、俺を最後に先生方が演習の説明を始める。
「えー今日は、皆知っての通り、二学年・三学年の合同演習です。………」
始まった先生方の無駄に長ったらしい前置き。
自分は大事な部分のみに耳を傾ける。
「二・三で組を作り、一人二組になってもらいます。そして、その組で頂上を目指して貰います。ただし、この山の中のどこかに隠されている巻物を見つけだし、それを持ってくるのが条件です。」
俺は先生方の説明をききながら小さな笑みを零す。
これくらいの演習なら誰と組もうがすぐに終わるだろうと考えたのだ。
「よーし、組はくじで決めて貰う。ここにくじがあるから順番に引いていけ!」
組が出来次第出発してくれ、頂上で待つ!という言葉を残し、先生方は姿を消した。
くじを引く。
四つ折にされた紙を慎重に開く。
中に書かれし数字は、
「……3か。同じ数字の奴を探せばいいんだよな。」
俺は3と書かれたくじを手に握りしめ、周りを見る。
どうやら何組かはもう出発したようだ。
始めるよりも人が少ない。
自分も遅れはとれないと、内心焦ってペアを探し始めた。
その時、あいつが俺の目の前に立ち塞がった。
「お前、邪魔何だけど」
「てめぇ、先輩に対してなんちゅー口の聞き方しやがる。先輩をつけろ、そして敬語を使え。」
「ふん。つける必要なんてないと思うけどな。」
「ふざけやがって」
「「………ふんっ」」
一時ながら会話が途切れる。
俺は相手に気づかれない程の小さなため息をついた。
今は物凄く気分が悪い。
今回の演習………二・三合同ならばこいつがいるのは当たり前。
そう、当たり前なのだ。
どうしてなのだろうか、俺はこいつがいるのを承知でここにいるのに………。
思った以上に気分が悪い。
俺は一秒でも早くこいつの顔を視界から消したくって踵を返し向きを変える。
すると、あることに気がつく。
「………誰もいない」
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