エメラルド

□一秒でも長く
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道なき道を進んでいく。

地面が抜かるんでいて、思う様に足が進まない。

後ろで富松が何かを叫んでいる様だが今は無視だ。

少しずつ慎重に進んでいく。
あと少し、あと少し……



「とれた、……!やったとれたぞ!!」


俺は上半身だけを後ろに向け、巻物を富松に見せ付ける様に持つ。


「たっく………」


富松は安心したような顔でため息をつく。

俺は戻るため、また道なき道を歩く。

と、その途端足が地面に浸かってしまい、足が動かなくなった。


「おわっ!」


俺はバランスを崩してしまう。

俺が倒れる先にはあるはずの地面がなく崖となっていた。


「………っ!」

「あぶねー!!!」


パシッー、


「ハァ………あぶなかったな」

「ーっ!!!」


このまま崖下まで落ちると思った。

でも落ちっていったのは、俺ではなく俺の足元にあった小石達が下へ下へと落ちていった。



上を見れば、俺の手を富松が掴んでいた。


「な、何でだよ!」

「知らねえーよ。勝手に手が出ちまったんだ。」


そういうと、富松は力一杯に手を引き、上へと上げた。




何で…何でなんだ。
俺の目から自然と雫が流れ落ちていく。


「な、何だよ。そんなに怖かったのか?それともどこか…」

富松が慌てた様子で聞いてくる。
俺は、首を横にふる。


「別に怖くなんか…ただ、ただ、……っ!」


嗚咽が込み上げてきて上手く言葉が発せない。


そんな俺の体を富松が割れ物扱うごとく優しく包み込んでくる。
背中は一定の間隔で叩かれ。

まるで子供をあやすかの様に。


「大丈夫だ…お前は死んでねー、今ここにいるだろ。」


富松は俺に言い聞かせる様に語りかけてくる。



俺は思わず富松の服の裾を強く握りしめ、頭を胸板へと預けた。

さっきまで続いていた嗚咽も段々に治まり始める。


「………笑わないのか?」


「何を、だ?」

「いや、………泣いた事とか…」

「あぁ?…笑わねーよ、別に」


今更泣いたことが恥ずかしくなり、つい口ごもってしまう。


だが富松はたいして気にしてないような顔で答えた。



「誰だって涙が出ちまう時くらいある。………俺だって今だ泣いてたりするしな」


「……俺さ、別に死ぬことが怖くなって泣いたわけじゃないって言ったら嘘になるけどよ。………もしかしたら、俺は……ただ悔しかったのかもしれない」


「悔しい?」

富松は、不思議そうに俺の言葉繰り返す。




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