エメラルド

□僕の側にいて
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「っ---いてっ」


傷口に消毒液がひりひりとしみてくる。

作兵衛は、あまりの痛みに思わず片目を瞑る。

そして、もう片方の目には、うっすら涙が浮かべられる。

「ご、ごめん。染みた?痛いだろうけど、もう少しだけ我慢しててね。」


作兵衛の反応に、始めは驚いた様子の数馬だったが、流石保健委員といった所か、後は手慣れた作業のようだ。


「にしても、気をつけてよね作ちゃん。委員会の仕事を頑張るのもいいけど、ほどほどに…。」

「分かってるよ。今日はたまたまだ。」


数馬の言葉に少し不服そうに顔をそっぽ向ける作兵衛。確かに彼自身の言う通り作兵衛が委員会中に怪我をすることが珍しかった。

ましてや医務室に来るなど滅多にない事だ。


右手に打撲と深い切り傷。
用具委員会の仕事。用具倉庫で忍術の道具をチェックしている時に一年生が誤って棚をひっくり返してしまい、それを庇った時にできた傷らしい。



「とにかく、酷い怪我だよ。当分は安静にしてないと」


「え!じゃ……委員会の仕事は……」

包帯を巻きながら冷静に話す数馬の言葉に作兵衛は目を見開き驚きと焦りを隠せずに言葉をもらす。


「何言ってんの作ちゃん。もちろん駄目に決まってるでしょ!」

「そ、そんな………。」

「当たり前でしょ。……とにかく事情を……作ちゃん?」


作兵衛が顔を真っ青にして焦てるものだから数馬は、びっくりして作業中の手を止め、作兵衛を凝視する。

だが、作兵衛は、そんな数馬にお構いなしに話し出す。


「駄目だ!絶対駄目だ!俺が用具委員会の仕事ができなくなるとすると、食満先輩と一年ボーズ共で活動を行うことになる。そうすれば俺がいない分食満先輩に負担をかけてしまう………いや、駄目だ!!ぜってェ駄目だ!そんな事は………」


何を考えたのか、ブツブツと言葉を言い放った後、スクッと立ち上がり足を外へ、つまりは、扉の方へと向けた。


「ちょっ……作ちゃん!?」

「わりー、数馬!やっぱり俺委員会にいかなきゃ食満先輩に」


そんな作兵衛を数馬は後ろから抱きつき必死で引き止めた。


「作ちゃん………少しは自分の事も考えてよ……そんな腕で何をするの?僕心配なんだよ。作ちゃんの事………。」


そう言いながらおもいっきり顔を作兵衛の背中に擦りつける数馬。

涙を流しているのか、作兵衛の服の一部が少し湿っているのがわかる。


「数馬……。」

作兵衛は数馬のほうへと向きを変え、数馬の抱きしめに愛しさを込め抱きしめ返す。


「作ちゃん……僕、作ちゃんの変わりになるか分からないけど用具委員会の手伝いに行ってくるよ。………だから……だから…お願い。今は、僕の傍にいて……」


この言葉に作兵衛は涙を流しながらただ頷くことしかできなかった。


END

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