Livingroom

□悪い夢を見たら
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「綺麗ですね」俺はその刀を見る度にそう言う。梵天丸様が気に入っていると、知っているから。
「だろ?小十郎もそう思うか」嬉しそうに笑う顔はとても愛らしくて、思わず撫でてしまいそうになる。…恐らく怖がらせてしまうだろうが。
「…手にとって見たいか?」
「…は?」何だって?手にとらせてくださる?梵天丸様の宝物を?この俺に?
「よ、よろしいので?」
「うん。小十郎もこれを気に入ってくれてるからな」そう言って、とててと俺の方に歩み寄って来た。
「ほら」と、俺の手に刀を置く。梵天丸様の手が俺の手に触れた、その瞬間。
「っ!!」鋭く息をのむ音がして、梵天丸様が身を引いた。
「………」
「………」
「………」
「…ごめん…小十郎が嫌いなわけじゃ、ないんだ…でも」説明出来ないらしく、顔をしかめて言葉を探す梵天丸様に、俺は優しく言った。
「えぇ、わかっております」
「…うん」俯いてはいるが、ちゃんと応えてくださった。
「しかし、本当に綺麗ですね」これ以上刺激しないように刀に興味を移す。輝かんばかりの銀色の刃に、青を基調とした柄と鞘。
「梵もこいつが好きだ。こいつを見ていると、何だか落ち着く」藍の着物に包まれた鋭い瞳の主は、その守り刀に良く似ていた。
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