聖闘士星矢夢

□英傑揃うは神の膝下
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突然の地震が起きた直後であった。
アトランティスを守護していた海将軍と、彼等を率いるポセイドンがいる海底神殿が、かの有名な三國志の世界に現れたのは。
海より程遠い位置、正に三国の中心に海底神殿を構えることになり、ポセイドンが何処か寂しそうにしていたのもつかの間、海底神殿に思いもよらない人物が訪ねてきた。
彼の名は呂布、字は奉先。
三國志の中でも最強と謳われる、代表的な人物である。
元々、ポセイドンは日本文化の一つ、オタク文化に一段と感心がある。
普段であれば訪問者などの会見はカノン達に任せているのだが、訪ねてきたのが呂布であるならばと、少し愉しげな表情で玉座に座り相手を迎えた。
彼は一人ではなく、彼の率いる軍を連れ立っており、会見には恐らく彼の軍師であろう陳宮が共にポセイドンの前に膝まついていた。
呂布は何処か偉そうではあったが。
だが、従順な呂布など呂布ではないと心の中で豪語しているポセイドンは、別段気にするわけでもなく、逆にその態度に興味を引かれながら陳宮の言葉を聞いていた。
彼等曰く、長い放浪生活で兵士達に疲労が溜まってきている。
そこで、ポセイドンの軍に加えてもらい、安住の地を手にいれたいのだと申し出た。
因みに、先程から控えているカノンとソレントは、呂布の態度に若干の反感を持っている。
自分達の信愛する女神に対しての態度が気に食わないのだが、それはポセイドン自ら諌めておいた。
陳宮の進言を全て聞き終わり、ポセイドンは呂布を見つめる。
まぁ、殆ど陳宮の話など聞いてはいなかったのだけども。
呂布の出で立ち、それはあまりにもあの有名なゲームの容姿にそっくりであったのだ。


「エンパイアーズ、か」
「ポセイドン様?」


ボソリと呟いた言葉は、ソレントにはしっかり聞こえたようで、不思議そうに様子を伺っている。
それに何でもないと伝え、再び呂布を見た。
かの有名な、三国無双。
勿論ポセイドンは攻略済みのゲームである。
鎧などから想定すると、三国無双4辺りであろうか。
しかし話に聞くと、三国は既に建国されており、どうにも時間軸が合わない。
呂布の配下には張遼もいるのだと言うし、導き出される答えは一つなのであろう。
歴史を変えることに興味は無いが、この世界がゲームで、しかもエンパイアーズの世界だとしたら、ポセイドンが気にする事もない。


「面白い。妾の配下になると言うのか。あの呂布が」
「ふんっ、本意ではないがな」
「貴様っ!!ポセイドン様に何という口を!!」
「抑えろカノン。良い、呂布はこうでなくてはな」


口許に笑みを乗せながら、ポセイドンはカノンを制止させる。
渋々カノンは、ポセイドンの言葉通り勢いを抑え元の位置に戻る。
呂布と言えば、あまりそのように相手を刺激しないでくださいと陳宮に怒られていた。
それはそうであろう、漸く見つけた安住の地を、主のお陰で逃してしまっては元もこもない。


「陳宮とやら、お前たちを我がアトランティスに迎えてやろう」
「真でございますか!?有り難き幸せ」
「呂布よ」


深々と頭を下げる陳宮をよそに、ポセイドンは呂布を呼ぶ。
呼ばれた呂布は、真っ直ぐにポセイドンを射ぬいた。
強く真っ直ぐな瞳に、ポセイドンが映る。


「妾はお前達を受け入れよう。だが、お前がここから出ていくと言うのであれば止めはしない。妾には妾の海闘士がおる。別にどうということはない」


そう言って、ポセイドンは自室に戻ろうと立ち上がり背を向けた。
そしてふと、立ち止まり背中越しに言葉を続ける。


「己の目で、しっかり見定めると良い」


ポセイドンはそれだけで言い残すと、完全に姿を奥に引っ込めてしまった。
残された呂布は、ポセイドンの消えた方をじっと見ているだけで、何も言わない。
陳宮に漸く声をかけられ、呂布は退出するべく踵を翻したのであった。











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