聖闘士星矢夢

□Όλυμπος
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オリンポスは、神々の住まう楽園である。
総ての神を束ねるゼウスの元、多くの神がすごしていた。
決して人の立ち入ることのできない領域を前に、ポセイドンの護衛であるカノンは緊張した面持ちを見せる。
オリンポスの入口は濃い霧がかかっており、視界はすこぶる悪い。
ポセイドンはここで待つように告げると、慣れ親しんだオリンポスの地を踏みしめた。
オリンポスの最奥。
大きく聳える神殿が見える。
正しく全知全能の神、ゼウスが住まうに相応しい豪華で煌びやかな造りをしていた。
その神殿を潜ろうとしたところで、声をかけられる。
視線を向ければ、そこにはゼウスの息子の戦神アーレスが立っていた。


「これは叔母上、お久しゅうございますな」
「アーレスか、変わり無いようだな」
「叔母上もお変わり無く。して、今日はどうされたのです?貴女がここに戻るなんて珍しい」
「少しな、ゼウスに用がある」
「ほう、父上に。それは貴女の失った神の力が関係しておいでで?」


アーレスの言葉にポセイドンが目を細めると、彼はニヤリと口許に笑みを浮かべていた。
やはり、神々には直ぐに分かってしまうほど、ポセイドンの小宇宙は無くなってしまっているのである。
何も言わず視線だけを向けるポセイドンに、アーレスは暫く黙っていたが急に肩を竦めた。


「まさか本当に小宇宙を失っているとは…アポロンの予言は当たっていた、ということですか」
「アポロンが予言していたか。なら、妾がここに来るのも分かっていたということだな」
「ええ、先日貴女が小宇宙を失って直ぐにアイツが来ましてね。父上に伝えておりました」
「そうか。ならば理由は言わんでも分かっておるな。通らせてもらう」
「ああ、今は止めておいた方がいいですよ」
「何故だ」
「只今夫婦喧嘩真っ最中」


呆れたように言うので、神殿の中を探ってみる。
すると、大きな破壊音と共に怒号が聞こえてきた。
恐らくヘラがゼウスに攻撃したのであろう。
だいたいこうして夫婦喧嘩しているということは、ゼウスがまた浮気をしたということで間違いない。
そう込めて再びアーレスを見れば、同意の頷きが返ってきた。
深々と溜め息を押し出す。


「懲りん奴だ」
「全くですよ。これ以上兄弟が増えるのは勘弁願いたいですね」
「ゼウスらしくはあるがな」


ポセイドンとアーレスが呆れていると、また誰かがやって来た。
漆黒の髪を靡かせ、同じ程に深い黒のローブを身に纏った男。


「兄上」
「叔父上までいらっしゃるとは」
「ゼウスがヘルメスを遣って余に伝えてきた。我が妹よ、これ程まで小宇宙を失っているとは…」


ハーデスは悲しそうに瞳を揺らしながら、ポセイドンの頬に手を伸ばす。
それを受け入れながら、ポセイドンは目を閉じた。
何とも言えない沈黙の中、神殿の奥から足音が聞こえる。


「あら、こんなところで何してるの、貴方達」


驚いたように声をあげるのは、ハーデスとポセイドンの姉であるヘスティア。
不思議そうにしているので、アーレスが説明しようとしたところで、再び破壊音が轟いた。


「まぁ、今日も派手ねぇ」
「姉上、ゼウスは…」
「大丈夫よ、一応頑丈だから」


心配するハーデスに、炉の女神はおっとりと微笑んだ。
それよりも、とヘスティアがポセイドンを視界に捕らえる。
優しい表情を消し、大事な妹が心配でたまらないという、姉の表情が表れる。


「ゼウスから話を聞いたわ。貴女のしたことは間違いではないわ。大丈夫、直ぐに元に戻るもの」
「姉上、ご心配をお掛け致します」
「いいのよ、貴女は私の大事な妹だもの」


そう言って、ヘスティアは優しくポセイドンを抱き締めた。








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