聖闘士星矢夢

□そして女神は…
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「ポセイドン様、お時間宜しいでしょうか?」
「かまわん、入れ」


ゆったりと自室でソファに寝そべり寛いでいると、海龍のカノンが伺いに来た。
入室を許可し、それでも体勢は変えることなくカノンを迎える。
緊張したような表情を見せる部下に、ポセイドンはカノンの言葉を待った。


「あの、その…こ、今度の日曜日なのですが、も、もしお暇なら俺とえ、映画を観にいきませんかっ!?」


緊張のまま、最後まで伝えることに成功した。
随分と不格好な誘いになってしまったが、今のカノンにそれを気付く余裕はない。
誘われたポセイドンと言えば、カノンの言葉を脳内で反復して思考すると、ふっと小さく笑みを見せた。


「妾とお前でか?」
「は、はいっ、お嫌でなければ…」
「ふむ…お前の仕事が終わればな」
「え?」


ポセイドンの返答に、一瞬呆ける。
そして言われた内容を思い出し、カノンの小宇宙が華やいだ。
カノンの仕事は他よりも多い。
通常であれば日曜までに終わるか怪しいところだが、カノンが本気を出せばあっという間に終わるだろう。
ポセイドンが言いたいことを正しく理解して、カノンは深々と頭を下げながら礼を述べた。
それに笑みを濃くさせ、ポセイドンは用が済んだのであれば出ていけと指示を出す。
それに大きく返事をし、カノンは浮き足立つ気持ちを抑えることもできずに自室に戻っていった。
カノンの小宇宙が遠ざかるのを感じながら、ポセイドンは自室の奥に目を向けた。
そこには、人魚のテティス。


「あれは気付いておらんな」
「ふふふ、随分と緊張してらっしゃいましたから」


カノンが来るよりも前に、テティスに身の回りの世話を任せていたのである。
広い部屋だがカノンとポセイドンの会話は確りと聞こえており、クスクスと笑っている。


「聞いていたと知ったら、取り止めると思うか?」
「まさか!海龍はどんなことがあっても、ポセイドン様とお出掛けになられますよ!」


まるで我が事のように楽しそうにしているテティスに、ポセイドンは否定せずにソファに置いてあったクッションを掴んだ。
手触りのいいそのクッションは、水色に近い青色をしている。


「そうだ!ポセイドン様、お召し物を買いに行きましょう!」
「何?今からか?」
「はい!善は急げと言いますし」
「別に手持ちのものでもよかろう」
「私も、ポセイドン様とデートしたいのです」


そう言って伺うようにポセイドンを見つめる。
ポセイドンは小さく息を吐くと、ゆっくりと立ち上がった。








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