ラッキーマン

□手を繋いで
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「兄さん?どうかしましたか?」


ずっと黙ったままの兄に気がついて、努力は兄を覗き込んだ。
それに慌ててなんでもないと返すも、優しい末弟は騙されず眉間にしわを寄せ困った顔を見せた。


「もしかして、私の話はつまらなかったですか?ごめんなさい、私ばかり喋ってばかりで・・・」
「いや、そうじゃなくて」


どうにも違った方向に勘違いする努力に、勝利は頭をがしがし掻きながらどうにか言葉を探した。
こういった場合、次男は器用に言葉をつむぎ努力の不安を取り去ってやることなど簡単なんだろう。
自分は昔から不器用だと思う。
それでもこの末弟をを思う気持ちはだれにも負けないと思うのだけど。
はぁ、とため息をつくとやはり勘違いしたのか努力の体が小さくはねた。
それを見て勝利は苦笑する。

真っ直ぐな弟。

どこまでも自分を信じ懐いてくれる可愛い可愛い・・・


「悪ぃ、お前のせいじゃねぇ。気にすんな」
「でも・・・」
「何度も言わせんな。お前のせいじゃない」


よしよしと、昔したように頭を撫でてやる。
その手が変わらず温かく大きい。
昔憧れた優しい兄の手。
泣き虫だった自分は、よく兄に手を引かれ家に帰っていた。
あのときの温もりを忘れたことは無い。
裏切られたと勝手に思い込み、兄の背負うものなど考えなかったあの頃でさえ。
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