ラッキーマン

□膝枕
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するとタイミングよく、授業を終えるチャイムが静かな校舎に鳴り響いた。
確か次はお昼休みであったはず。
しかし教室に戻るのは億劫でしかたなく、勝利はまたごろんと横になった。



暫く目を閉じていると、誰かが屋上にやって来た気配がした。
確かにここは別段立ち入り禁止などされている場所ではないため、今日は暖かく晴れているため昼食をとるのならもってこいの場所だろう。
自分以外の気配が気にさわり、入ってきた人物を追い返してやろうかとしたところで声をかけられた。


「こんなところにいたんですか、勝利兄さん!」


聞き間違うことなどするわけがない。
聞き慣れた、そして自分にとって最も大切で愛しい声。


「なんだよ、何かあったのか?」


振り向けばやはりそこには二番目の弟、努力が立っていた。
しかし勝利の記憶では、可愛い弟は昼食を師匠と慕っている洋一と食べていたはず。
それがいったいどうしたのだろうか。


「今日は給食が出ないと言ってたのに、お弁当忘れたでしょう?」


そう言えば昨夜友情がそんなことを言っていた気がする。


「わざわざ持ってきたのか?」
「うん、兄さんお腹空いてると思って」


素直に頷く努力に、自分が教室に戻ってくるという選択肢は無かったようだ。
まぁ確かに戻る気は無かったが。


「悪ぃな」
「別にいいよ、兄さん」


弁当を受けとると、てっきり直ぐ様教室に帰るかと思っていた弟は、勝利の隣にストンと座ると自分の弁当を広げた。


「ここで食うのか?」
「え?兄さん移動するの?」


てっきりここで食べるのかと思っていましたと、広げた弁当を片付けようとする。


「いや、ここで食うけどよ」
「?そうなんですか?」


兄が何が言いたいのか分からず、努力はこてんと首を傾けた。


「洋一と食べないのか?」
「師匠ですか?」


そこでようやく何を言っているのか理解した努力は、少し照れ臭そうに笑いながら答えた。


「今日は兄さんと一緒に食べたいんです」


ダメですかと聞かれ、勝利が断ることなどできるはずはない。
たまにこうやって、師匠より勝利を選んでくれる弟がたまらなく愛しい。
勝利はぶっきらぼうにそうかと言うと、自分も弁当を開いた。










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