ラッキーマン

□娘々物語
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この宇宙には、まだまだ自分が知らない事が沢山あるんだなぁ…

友情はどことなく冷静な頭で、そう呟いた。









大事な大事な弟から発せられた言葉は、今までの常識を覆す、理解し難い悩みであった。
聞いた直後勝利と友情は、んなアホな!!とまるでステレオのように同時突っ込みをした。
そんな話、おいそれと信じるなんて出来るわけがない。


「証拠を見せます!」


相談したことでふっきれたのか、努力はコップいっぱいに水を汲んでくるとそれを兄達の前で被った。
すると、確かに見た目などは努力に間違いないのだが、あきらかに男にはない胸の膨らみや、曲線を描くボディラインに、二人はあんぐりと口を開けるしかなかった。
しばらくの静寂が訪れるが、何も言わない兄達に不安が募り、またしても瞳が涙で潤んでしまう。
そんな努力を見て、慌てて声を出したのは、長男の勝利であった。


「お、お前ホントに女になっちまったのか!?」
「うぅ…はい、水を被ると…」


常でも勝利と努力では身長差があり、兄を見るには自然と見上げてしまうのだが、女になるとその差はさらに大きくなり、涙目も手伝いより一層勝利の心を騒がせた。
自分好みの女…元は努力であるが、何度も言うように彼は末弟を溺愛しているため…が自分を涙目で見上げている。
たまらい衝動に刈られ、それに抵抗することはなく衝動のまま努力を抱き締めた。


「し、勝利兄さん!?くるしいです〜」
「兄さん、努力が嫌がってますよ」


兄の腕の中でもがく努力に、そんな力がどこにあったのかと問いたくなるような力で、ベリッと剥がすような音が聞こえそうなくらい勢いよく友情が努力を助ける。
実は自分も抱き締めたい衝動に刈られたのだが、勝利に先をこされてしまったのであった。
これ以上ないくらい不満そうな兄の視線を受けながら、友情はにっこりと努力を見た。


「それで、どうやったら元に戻るんだい?」
「お湯をかければ男に戻ります」


そう言って、今度は風呂場に向かう。
少しして、やはり頭から被ったのか髪を湿らせた見慣れた弟が帰ってきた。
勝利と友情はお互いの顔を見合わせる。



男でありながら、可愛らしく、純情で真っ直ぐな弟。
そんな努力を、悪い虫から大事に大事に守ってきた。

しかし今回、水を被るとなんとも愛くるしい少女になってしまう呪いをかけられたのだと言う。


「友情、分かってんな」
「はい、努力は私達が守りましょう」



兄達に、更なる使命が出来てしまった。











序章終わり
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