ラッキーマン

□娘々物語
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努力が水を被ると女になるという話は、何故か仲間内にあっという間に広がった。

なるべく水を被らないようにしていたのだが、何というか師匠と慕う洋一がいつもの不運を発揮し、たまたま16人が揃っているところで言い訳できないくらい盛大に変身してしまったのだ。

ちなみに、そんなことしてくれちゃった洋一は、長男と次男に制裁をしっかり受け、現在入院中である。


「師匠は大丈夫だろうか…」
「ああ、そうだな」


先程から心配そうに溜め息を吐く美少女が隣に一人。
勿論それは努力である。
噂通りの姿に、初めは戸惑っていたが、少し慣れたのか今は並んで街を歩いていた。
少しというかかなり緊張している猛トレに気付かずに、努力は洋一の心配ばかりしている。

少しばかり面白くない。


「アイツは何があっても死なんだろ」
「ああ、何て言ったって私の師匠だからな!!」


励まそうとそう言えば、満面の笑みで返された。
超ド級の可愛さだったが、いかせん自分に向けられたわけではない。

非常に面白くない。


「あ、あのな、努力マン」
「ん?何だ、猛トレ」


呼ばれて、小首を傾けながら言葉を待つ努力は、犯罪的に可愛い。
なにこの可愛い生き物!!
プチンと、猛トレのなにかが切れた。


「努力マン、お前がほばはぁっ!!」


全てを言い終える前に、目の前にいた猛トレが消えた。
正確には、頭にコンクリートの塊を直撃させ足元に倒れこんだの間違いだが。


「も、猛トレ!?」


何が起きたのか分からない努力は、急いで猛トレを介抱しようとするが、ポンッと肩に誰かの手が置かれ静止させられる。
振り返ると、そこには珍しく笑顔の勝利。


「に、兄さんこれは!?」
「ダメじゃないか猛トレくぅん、ちゃんと避けないと修行にならないぞぉ〜」
「え?修行ですか?」
「おう、反射神経を鍛える修行を俺が(一方的に)手伝ってやってんだよ」


兄の言葉に疑うということを知らない努力は、兄の親切に感激し全てを信じてしまった。


「自分でなんとかするのも修行のうちだからな、努力は手を貸すなよ?」
「はい、分かりました!!」


とてもいいお返事に満足すると、勝利は帰るかと努力の腰に手を回し、帰路へ促した。
まだ沈んでいる猛トレが気になったが、勝利に修行だからと言われてしまえば仕方ないかと思い直した。



楽しげな兄弟の会話がだんだん遠くなっていくのをBGMに、猛トレはひっそり涙したとかしないとか。










end
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