ラッキーマン

□夢の中でも
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そっと、中の人物が起きないように静かにドアを開く。
中はやはり真っ暗で、規則正しい寝息が聞こえてきた。
勝利は努力の側まで近寄ると、宇宙で一番愛しい弟の顔を覗きこんだ。
くぅくぅと可愛らしい寝息と共に、胸が上下する。
かなり近づいてみるが、熟睡しているのか起きる気配はなかった。
通常、これだけ近くに誰かが近づくと努力返しをされてしまうのだが、どういうわけか勝利にはそれが繰り出されることはなかった。
信頼してくれているのだと思うと、くすぐったいのと同時に愛しさが募る。
ゆっくりと前髪をかきあげるように撫でてやると、気持ちいいのか勝利の掌を求めるように努力がもぞもぞと動いた。


「ヤベェ…可愛いなお前…」


少々聞く人がいれば問題発言として突っ込まれかねない言葉が漏れる。
だが仕方ない、現に彼の目の前で無防備に眠る末弟は可愛らしいのだ。
心地よくリズムをとっているかのようにされている呼吸を聞いていると、先程まで遥か彼方に遠出していたはずの眠気が帰ってきた。
だがまた自分の部屋に戻るのも億劫なくらい強い眠気である。
勝利は努力のベッドに潜り込むと、抱き締めるようにして眠りについた。
ここまでされても、やはり努力は起きる気配はなかった。











翌朝、何故か目の前で寝る前にいなかったはずの長男の顔のドアップに、努力が驚いて叫び声をあげたのは余談である。












end
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