ラッキーマン

□cooking
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「どうすりゃいいんだ…チクショウ、何も思い浮かばん!!てか友情は絶対逃げたな…あの野郎覚えてろよ!?」


今はいない友情に、勝利は恨めしそうに呟く。
そうこうしている間に、キッチンからは出来たと、可愛らしい声が聞こえてくる。
声は非常に可愛らしいのに、内容は勝利への死刑宣告だ。
もうこれは覚悟を決めるしかない。
どうにでもなれ!!と自暴自棄になったところで、努力が餃子を手にリビングに入ってきた。


「勝利兄さん、お待たせしました」
「お、おぅ…は、早かったねじゃねぇか」


ニコニコとしている可愛い顔の下に、恐怖の餃子。
ああ、汗が止まらない。


「頑張って努力しました!食べてみてください!!」
「うぇ、そ、そうか…」


綺麗に盛り付けられた餃子を勝利の前に置く。
もう完全に逃げられない。
ノロノロと箸を手に取り、そしてそのままのスピードで餃子をつかむ。
何だか既に胃が痛くなってきた気がする。
ちらりと努力を見ると、期待に満ちた瞳を向けている。


「………………」


だが、例え可愛い可愛い弟で、しかも恋人という肩書きがある努力のその瞳であっても、一度植え付けられた記憶は塗り替えるのは難しい。
餃子を掴んだまま進まない勝利に、段々努力の眉が下がる。
やはり苦手を克服することはできないのだろうか。
そんな努力に気が付いて、勝利は焦った。
餃子を掴んだままの自分を見て、何よりも大切な努力が泣きそうになっている。


「な、泣くなよ努力!!」
「だって…兄さん…僕のせいで、餃子大好物だったのに食べられなくなって…っ」


とうとう涙が溢れて溢れてしまった。
その様子を見て、勝利は内心自分自身に舌打ちした。


「努力」
「ふぇ?」


呼ばれて俯いていた顔をあげると、いつの間にか近くに来た勝利に口を塞がれる。
軽いバードキスだが、突然の事に驚いて、努力の涙は止まっていた。


「大丈夫だ、俺は餃子が大好物だって知ってんだろ?」
「でも…兄さん…」
「俺に弱点なんてあるわけないだろ?」


そう言うと、勝利は餃子を掴んで口のなかに放り込んだ。
餃子の味が口内に広がる。
もしゃもしゃと食べる兄を見て、努力はポカンと口を開いている。
ゴクリと飲み込む音がして、勝利はコップに汲んであった水を飲み干すと努力を見た。


「な、食べれただろ?」
「あ、兄さん、無理しないで。美味しくないよ」
「バカ!お前が作ったものが美味くないわけねぇだろ!!」


そう言ってまた餃子を食べ始める。
その顔は無理をしている様子はなく、本当に美味しそうに食べている。


「努力」
「はい」
「上達したな」


兄にそう誉められて、嬉しくて嬉しくて。
努力は破願すると勝利に抱きついた。











end




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