ラッキーマン

□雨雨降れ降れ
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「そんなことあったなぁ…」


昔を思い出して、努力の口元が弛む。
小さな頃、勝利が努力の世界の中心だった。
何も知らなかったあの頃は、ある意味とても幸せだったのかもしれない。


「でも、そんな都合よく同じこと…」
「努力!!」


聞き慣れた声にまさかと視線をやると、あの頃と同じ様に勝利がいた。
もう努力も大きくなったのだし、迎えになどこないと思っていたのに。
努力は胸に熱いものが込み上げてくるのが分かった。
急いで近づく兄に、努力は幼い頃と同じ様に駆け寄る。


「兄さん!!」
「やっぱここだったか」


努力の姿を見て、安心したように笑う姿。
何もかもが変わらず目の前にあって、努力は一瞬錯覚してしまいそうになる。
そんな様子の努力には気付かず、勝利は帰るぞと言って手をさしのべた。
努力はにっこり笑ってその手をとると、勝利の傘に入れてもらう。


「兄さん、有難うございます」
「おう、別に構わないぜ」


自分が好きでやったことだと言う兄の頬は少し赤かった。
二人は一つの傘に寄り添いながら、友情の待つ家に帰っていく。




こんな雨の日も、悪くないと思った。









end




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