聖闘士星矢夢

□英傑揃うは神の膝下
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それからというもの、呂布の中で何か心境の変化があったのかもしれない。
しかし以前のように不満は無いようで、しかし彼らしさは失われずポセイドンに仕えていた。
猛獣を手懐けた手腕は、忽ち三国中を駆け巡り、また攻防戦に現れる女神の美しさに心を奪われたものが続出し、多くの者がアトランティスに士官を申し出ていた。
しかし、ポセイドンは興味がないことにはとことん興味を示さない。
士官の会見は例のごとくカノン達に任せ、己はのんびりと神殿付近を散歩していたりする。
本日も、慌ただしく駆け巡るカノンや陳宮達を尻目に、ポセイドンは神殿を出て陽の下を歩いていた。


「…誰だ」


人の気配を感じ、ポセイドンの視線がそちらに動く。
息を呑んだ気配の後、茂みから現れたのは若い男であった。
出で立ちから、この男が誰であるか悟ったポセイドンは、目を細めてその男を視野に入れる。


「突然の来訪申し訳ございません。しかし、こうでもしなければ貴女様にお会いできぬと思い、勝手ながら忍び込ませて頂きました」
「ほう、妾に会いに、か。流石は全身肝と呼ばれた男よな。趙雲」
「私のことをご存知なのですか!?」


趙雲と呼ばれた男は、驚いたように目を見開く。
そしてそれは段々と歓喜に満ちた色を濃くしていき、そしてポセイドンの足下に膝をついた。


「貴女様に知っていただけているとは、至極光栄にございます」
「御託はよい。用件を言え」
「はっ、私は長く自分が仕えるべく主君を探しておりました。そこに、以前貴女様を戦場でお見掛けした時、この方しかいないと確信したのです」


戦場でただ静かに戦況を見つめる女神。
美しいだけでは無く、凛と佇むその姿は見るもの全ての者を惹き付ける。
海闘士と呼ばれる七人の海将軍を従え、更にはあの呂布さえも手懐けた手腕。
戦う配下には、不満というものは無いように見えた。
兵の全てが一丸となってこのポセイドンの為に戦う姿は、まさしく己の理想としていたものだった。
この女神に、己の全てを捧げたいと思った。
まるで熱愛の情のように焦がれるこの想い。
しかし、士官を申し出た多くの者がポセイドンの姿を見ることは愚か、士官することも難しいのだという。
それはそうであろう、多くのことは海闘士や呂布軍で事足りてしまえるのだから。
ならばと、趙雲はどうにかポセイドンに直接出会い、士官を申し出るしかないと、そう思ったのだ。


「その愚かさは嫌いではないぞ」
「それではっ!!」
「お前は、蜀に仕えるのだと思っていたが?」


史実では、趙雲は劉備に仕える。
そして五虎将軍の一人として、名を後世に残す。
若干のズレはあるものの、おおよその歴史は変わらないものだとばかり思っていた。


「確かに、劉備殿も主にするに素晴らしいお方です。しかし、私は貴女様に仕えたい」


真っ直ぐに見つめる瞳を、ポセイドンも見返す。
暫く考えるように沈黙した後、小さく趙雲の名を呼ぶ。


「戻るぞ」
「ぇ…ぁ、どちらへ?」
「神殿に戻ると言ったのだ」
「そ、それでは…」
「ふん、死ぬまで妾に仕えろ」
「は、はい!!命にかえても、貴女様をお護り致します!!」


趙雲は喜びに満ちた顔で、先に歩き始めた主の後ろに続いた。











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