混合

□僕の友達
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とてとてと、可愛らしい足音を発てながら幼子が歩いている。
その様子は他者から見てもご機嫌で、ついついスマートフォンを構えてしまうもの。
宝瓶宮にやって来たさい、デスマスクのムービーを撮りながら滝涙を流す親友を慰めながら、ミロはそのご機嫌な理由を聞いてみた。


「あのねー、僕友達が増えたんだよ!ねー」
「はい、その友達を紹介するために階段を登っているのであります」


デスマスクの側でふよふよと浮いている白い物体は、妖怪執事のウィスパー。
世話好きの彼は妖怪に関しては頼りないものの、私生活において充分にデスマスクをフォローしていた。
前に日本に行ったとき、このウィスパーと出会い妖怪が見えるという妖怪ウォッチというものを手にしてから、何故か他の黄金聖闘士達も時計無しで妖怪が見えるようになっていた。
恐らく、妖怪ウォッチとデスマスクの小宇宙が共鳴したり何かしたりしてそうなったのだろうと、曖昧な結果を伝えたのは教皇シオンだ。
説明されてもよく理解できなかったデスマスクは、そうなんだぁと何も考えずに納得する。
他の者も、デスマスクに危害がないのであればと、深く突っ込むことはしなかった。
黄金聖闘士、いや聖域にとって何よりも優先されるのはアテナとデスマスクの安全である。
突っ込むのもほとほと疲れるのだが、それでいいのか聖域!と叫びたくなる衝動を抑え、ウィスパーはその紫色の唇を笑みの形に残したまま三人を見下ろしていた。


「そうだ!カミュ兄ちゃんとミロ兄ちゃんにも紹介していいかな?」
「私にお前の友達を紹介してくれるのか?なんて良い子なんだ…」
「はいはい、カミュは落ち着こうな。ちび、紹介してくれるか?」
「うん!」


再び咽び泣くカミュを落ち着かせながら、ミロはにこりとデスマスクを促した。
デスマスクは意気揚々とポケットから妖怪メダルを取り出すと、それを首から下げていた妖怪ウォッチに差し込む。


「出てきて!僕の友達!」


そうして光輝き、お約束の歌が流れる。
召喚された妖怪は二匹で、どことなくフォルムがそっくりだった。


「コマさん!」
「コマじろう!」


もんげーと二匹そろって叫ぶ姿が、とても可愛らしい。
どうやらこの二匹は狛犬の妖怪であり、そして兄弟なのだという。
妖怪パッドを使いながら必死に説明しているウィスパーを尻目に、カミュとミロは一人と二匹をまじまじと眺める。


「もんげー、ここが神様がいる所ズラか」
「兄ちゃん、この二人もデスマスクと一緒の神様の戦士様みたいズラ」


ズラズラと田舎者のような口調で話す兄弟。
実際に田舎から出てきたのだと言っていたのでそうなのだろう。
デスマスクと揃ってニコニコとしている姿は正に癒し。
カミュはこれでもかというほど、ムービーを撮りまくり、ミロにも突っ立っていないで写真を撮れと言っている。
それに疑問を抱くことなく、ミロもミロでしっかりと写真をメモリに残している。


「デスマスクくん、そろそろ上に行った方がいいのではないですか?」
「あ、そうだった!カミュ兄ちゃん、ミロ兄ちゃん、僕もう行くね?」
「ああ、引き留めてすまなかったな」
「じゃぁな、ちび!」


二人に向かってばいばいと手を振ると、デスマスクはウィスパーとコマ兄弟と共に教皇宮を目指したのであった。







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