混合

□Solicitation
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「デス、ちょっといいか?」
「ふぁ?」


ふいに呼び止められて振り向くと、サガ立っていた。
どうかしたのかと近寄れば、手に持っていた二つの封筒を渡される。
意外に分厚い。


「これを冥界と海界に持っていってくれないか?」
「へ?何で俺が?」
「暇だろ?」


嫌そうにそう言えば、にっこり笑って返された。
確かに、先程仕事を終わらせてしまっているため、暇になったと言えば暇である。
じゃぁ頼んだぞと、デスマスクの了承を得ずにサガはそそくさと行ってしまった。
おそからくまだまだ山積みになっている仕事に取りかかるのであろう。
残されたデスマスクは、仕方ないと嘆息してまずは冥界へと行くために積尸気を開いた。






着いた先の冥界。
カイーナにいるラダマンティスを訪ねれば、バレンタインに応接室に案内される。
ラダマンティスは他の仕事で遅れて来るらしい。
そうなのかと思考しながら、バレンタインの淹れた紅茶を飲む。


「うめぇっ!!お前、紅茶淹れるの上手いんだな!!」
「まぁ、ラダマンティス様が紅茶に拘りがあるようなんで、それでな」
「ラダマンティスは、生まれは何処なんだ?」
「イギリスだ」
「あー、納得」


ラダマンティスの出身地を聞き、ふと思い出したのは某眉毛紳士。
料理は壊滅的に不味いのに、何故か紅茶だけは一級品だと悪友の一人が悔しそうにしていた。
デスマスクもお茶に呼ばれたことがあり、確かに紅茶は最高だったのを覚えている。
一緒に出されたスコーンとおぼしきものは、見た目から危険な色形をしていたので丁重にお断りしたが。


あー…でもあの眉毛野郎、スコーンも一緒に食えとかしつこかったよなぁ…


そういえば、ラダマンティスも眉毛が特徴的だなと思い浮かべる。
繋がり眉毛…ダメだ、思い出しただけで大笑いできそうだ。
イギリス人とは眉毛がアレなことになっているのが通常なのだろうか。


「なぁなぁ、ラダマンティスも料理とかすんの?」
「まぁ、たまにお作りになるな」
「あー…スコーンとか?」
「ああ、その通りだ」


よく知ってるなと、バレンタインは驚いたようにデスマスクを見る。
バレンタインの返答に、はははと力無く笑う。
当たりたくないが、まさかまさか…


「あ、味は…」
「…………」


ふぃっ、とバレンタインが目を背ける。
デスマスクの予想は的中なようで、やっぱイギリス人はそうなのかと確信した。
そこに、コンコンとノックがあった後、ラダマンティスが扉を開けて入ってくる。
手には…何やらモザイク的な黒い塊を乗せた皿。
サッと二人の顔が青く染まった。


「待たせてすまないな、わびにスコーンを作ったんだが…」


少し照れながら差し出すラダマンティス。
デスマスクは知っている、この状況は過去に何度か体験した。
違うのは、ラダマンティスがツンデレではないということくらいか。
ガシッとバレンタインの腕を掴む。
バレンタインは本当に申し訳なさそうに、デスマスクを見るだけ。


「さぁ、遠慮しないで食べてくれ。バレンタインの淹れた紅茶は美味いからな、スコーンとよく合う」


ああ、自分は三回目の死の覚悟を決めなければならないのか…
いや、前世合わせて四回目?
そんなどうでもいいことを考えて、恐る恐るスコーンに手を伸ばした。
一生懸命作ったのだろう、緊張しながら自分を見ている三巨頭の一人の翼竜。
何となく無下にすることができないと悟り、デスマスクは意を決して一口食べた。



そこから先の記憶は全く無かった…











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