混合

□初めまして世界
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蟹座の聖闘士が現れたのだと、星見を終えた教皇が目の前に膝まづくサガを見下ろした。
直ぐに連れてくるのだと言われて、サガは1つ返事をすると教皇宮を後にする。
向かうは、イタリアのヴェネチア。
イタリアにつくまで半信半疑であったが、ついた途端に仄かに感じる小宇宙。
確かに聖闘士が居るのだと確信し、その小宇宙を便りに探すと、小さな教会に辿り着いた。


「ここに…蟹座の聖闘士が…」


一体どんな人物なのだろうか。
ゆっくりと扉を開くと、サガは目を見開いた。


「ルンルンルーン♪ルネッサァンス〜」


可愛らしい歌声で歌を歌っているのは、明らかに幼子。
まさかそんなはずはと思い回りを見渡すが、幼子以外見当たらない。
しかし、ずっと感じていた小宇宙は確かに身近に感じている。
狼狽えるサガに、漸く気が付いたのか、掃除をしていた幼子が振り向いた。


「あれあれ?兄ちゃんはだぁれ?」
「わ、私はサガと言う」
「そうなんだぁ、僕はね、フェリシアーノだよ〜」


パスタとピッツァが大好きなのと、可愛らしく微笑みながら自己紹介するフェリシアーノに、身体の緊張が抜けていく。
ついつい微笑ましくなり、サガはゆっくりとフェリシアーノに近付いた。


「その、お前以外に人は居ないのか?」
「あのね、神父様は今はお出かけしてるよ〜」


最後の望みをかけて訊ねてみたが、やはりフェリシアーノ以外に人は居ないようだ。
それに、フェリシアーノに近付いて、やはりあの小宇宙はこの幼子のものだと確信した。
こんなに幼い子供が、蟹座の聖闘士だと…
黄金聖闘士達が次々に現れ、聖戦が近いのだと予感させている。
しゃがみこみ、よしよしと頭を撫でてやると、フェリシアーノは嬉しそうにヴェ〜と笑っている。
そこに、再び扉が開く音がした。
振り向くと近所の子供たちであるのだろう、慣れた様子で中に入ってくる。
すると、途端にフェリシアーノは怯えたように震えだした。
どうしたのかという問いかけは、直ぐに子供たちの言葉でかき消されてしまう。


「まだ教会にいるのかよ、“デスマスク”!!」
「うわぁ、殺される〜!!」


子供特有の高い笑い声をあげながら、子供たちはフェリシアーノを指差す。
“デスマスク”と指されたフェリシアーノは、プルプルと泣きそうになりながら、サガの陰に隠れていた。
一体何事かと目を白黒させているサガに、子供たちはやはり楽しそうに声をあげた。


「お兄さんも逃げた方がいいよ!!そいつ、化け物だから!!」
「化け物?」
「そう!幽霊が見えるんだって!!」


化け物と呼ばれたフェリシアーノは、とうとう涙を溢しながら必死に違うよとか細く抵抗するも、子供たちはそんな言葉は聞こえないといったように続けた。


「だってお前、たまに変な一人言言ってんじゃん」
「それに、お前の回りで火の玉が飛んでたって、マンマが言ってたぜ!」


そこではたと、サガは昔聞いた教皇の言葉を思い出す。
代々蟹座の聖闘士は黄泉の力が強く、またその力を利用して戦うのだと。
まだ幼いながら既にその頭角を現しているのかと、場違いな感心をしてしまった。
しかし、いくら真実にあるにしろ先程からの子供たちの暴言は酷すぎる。
サガが何か言いかけた時、第三者の声が響いた。


「貴方たち、何をしているのです?」
「げっ神父様だ!!」


神父と呼ばれた男の登場で、子供たちは慌てて教会から逃げるように出ていってしまった。
その背中を嘆息しながら見送り、神父はサガに向き直る。


「お騒がせしました。ようこそ、我教会に」


優しそうな笑みを浮かべて、男はサガたちに近付いた。












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