混合

□初めまして世界
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神父に何か用かと聞かれ、サガは今回の任務であるフェリシアーノの迎えの話を伝えた。
神父は黙ってサガの話を聞き終えると、しょんぼりと、掃除を続けているフェリシアーノを呼ぶ。
よちよちと歩いてきたフェリシアーノを抱き上げて、神父は言い聞かせるように優しく口を開いた。


「貴方が突然ここにやって来て随分日が経ちました。貴方は周りから苛まれても、誰も恨むことをせず、一途に神を慕っていましたね。今、神は貴方を主とは別の神に託そうとしています。しかしそれは悲しいことではありません。神が授けたその力を、この方たちが必要としてくれているのです」
「神父様…」
「貴方のその力は、亡くなった者たちを安らかな場所へ導く力です。何も恐れることはありません。“デスマスク”という呼び名も、誇りに思えるようになりなさい」


神父はそう言うと、フェリシアーノを下ろした。
サガに向き直ると、この子をどうかお願いしますと頭を深々と下げる。
神父の心を汲み取り、サガもしっかりと頭を下げ、意思示した。
フェリシアーノはためらいを見せたが、神父をもう一度見上げ、そしてサガに視線を移すと差し出されたその手を取った。
さようならと、有り難うを伝え、幼子に合わせてヴェネチアの街を歩く。
イタリアから出る際に、フェリシアーノは今まで黙っていた口を開いた。


「あのね、サガ兄ちゃん。僕お願いがあるんだ」
「お願い?」
「うん、僕ね、今日から“フェリシアーノ”じゃなくて“デスマスク”って呼んで欲しいの」


突然のお願いに、内容が内容なだけに驚いてフェリシアーノを見る。
フェリシアーノはニコニコと笑みを見せながら、神父様と約束したからと笑った。


「僕、“デスマスク”って呼ばれるの嫌だったの。怖かったから。でもね、神父様が言ってたでしょ?誇りに思えるようにって」
「あぁ、そうだな」
「だからね、僕はこの名前を好きになろうって決めたんだ。だからね、“デスマスク”って呼んでね」
「…そうか」


幼いながらに一生懸命考えた答えなのだろう。
いっそ微笑ましくも思える。
サガはフェリシアーノ…デスマスクを抱き上げると、優しく笑んで見せた。


「改めて、これから共にアテナの為に戦おう、“デスマスク”」
「うん、宜しくね、サガ兄ちゃん!!」


この幼子を、自分の持つ全ての力で護ろうと、そう決意しながらサガはギリシアにある聖域に急ぐのであった。











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