混合

□小さなPostman
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最近のデスマスクのマイブームは、郵便屋さんだという。
サガに頼まれた手紙を他の黄金に送るのが気に入ったようで、てこてこと十二宮を往復している。
そしてその可愛らしい姿に触発されたのか、ムウが裁縫スキルを発動し、デスマスク専用の郵便配達の制服を作ってあげた。
それもたいそう気に入って、幼子は今日もヴェ、ヴェと歌いながら階段を登る。
アイオリアからの手紙を教皇宮にいるアイオロスに手渡して、よしよしと頭を撫でてもらった。


「有り難うな、デス。助かったよ」
「ヴェ〜、アイオロス兄ちゃん、兄ちゃんは誰かにお手紙ある?」
「ははは、すまない。今は無いなぁ」
「サガ兄ちゃんは?」
「すまないデス…私も今は無いんだ」
「そっかぁ〜」


残念そうにしているデスマスクに、サガの何かがキレた。
スライディング土下座をしたと思ったら勢いよくデスマスクを抱き上げ、瀧涙を流しながら幼子を抱き締める。


「すまない、私はなんと罪深いのだ!!お前を悲しませるなど…すまない、すまないデス!!私は、私はぁぁぁぁぁあああっ!!」
「ヴェ!?サガ兄ちゃん、泣かないで!!」
「うん、取り敢えず落ち着こうな、サガ」


全力で幼子に謝罪する三十路手前の大男。
はたから見たら本気でドン引きだが、ここは聖域。
こんなことは日常茶飯ry
アイオロスが笑いながらサガにチョップし、デスマスクを救出する。
チョップと無理矢理デスマスクと取られてしまったため若干黒くなりかけたが、デスマスクがサガ兄ちゃん大丈夫?と涙目で心配するので直ぐに引っ込んだ。
単純な男である。
そこに、騒ぎを聞き付けたのか、デスマスクの小宇宙を感じて見に来たのか、シオンが顔を出した。
まぁ、十中八九後者であろう。


「何だ、騒がしいな」
「あ、シオン様だ」
「おお、デスマスク。来ておったのか」


わざとらしく驚きながらデスマスクを手招きする。
デスマスクはアイオロスに頼んで下ろしてもらうと、てこてことシオンの側まで小走りで近付いた。
デスマスクが離れてしまい、またもや涙を流す同僚を、アイオロスは綺麗にスルーして二人を見守った。


「ムウから貰った衣装か、なかなか似合っておるな」
「わぁ、ほんと?僕嬉しいなぁ」


幼子を抱き上げながらそう褒めると、デスマスクは照れてれとしながらはにかんだ。
それはなんともか可愛らしく、まさに天使と言っても過言ではない。
いや、もう天使だ。
デスマスクが天使でなったら何が天使なのか!!
うちの天使マジ可愛い!!
以上がその場にいた残念な大人達の脳内である。
そんな大人達の脳内など知るよしもない幼子は、シオンに抱かれながらクイクイと法衣を引っ張る。


「ねぇねぇ、シオン様。あのね、シオン様は誰かにお手紙ある?」
「ん?お手紙か?」


あったら届けてあげるのと、可愛らしく言うものだから、シオンはもうでれでれだ。
少し待つようにと言いながらデスマスクを下ろすと、どこから取り出したのか羽根ペンと洋紙を取り出すとそこにスラスラと文字を書いていく。
そして書き終わるとそれを丸め、ほどけないように確りと紐で結ぶとデスマスクに手渡した。


「これを五老峰にいる童虎に渡してくれるか?」
「ヴェ?童虎じいちゃんに?」
「ああ、できるか?」
「うん、僕行ってきまーす!!」


五老峰には何度も遊びに行ったことがあるため、不安もなくにこりとその手紙を届けることに同意する。
嬉しそうなデスマスクに、やっぱり大人達は和んでいた。


「じゃぁ僕、童虎じいちゃんのとこに行ってくるね」
「ああ、気を付けて行ってきなさい」
「頼んだぞ、デスマスク」
「知らない人に着いていってはダメだからな」


手を振りながら教皇宮を出ていこうとするデスマスクに、サガ、シオン、アイオロスが並んで見送る。
小さなデスマスクが直ぐに見えなくなると、三人は何も言わずに部屋に戻った。
仕事をするべくデスクに座り、さて仕事を再開するかとしたところで、アイオロスがポツリと呟く。


「デスは迷子にならないだろうか…」


その呟きは意外に大きく、部屋に響いて他の二人に届く。
少しの沈黙の後、がたりと大きな音を発ててサガとシオンが立ち上がり発狂し始めたのは仕方がないことなのかもしれない。











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