Gガンダム

□Valentine March
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まだまだ寒さが身に染みる2月。
何の気なしに街をぶらついていると、そこらじゅうからチョコレートの匂いが漂っていた。
2月、チョコレートときて思い当たるのはバレンタインデー。
本来の意味とはかけ離れた内容になってしまっているが、世界で共通していることというと愛を伝えたり確かめたりする日である。
欧米であれば、男性から女性へ花束やプレゼント等を贈るのだが、ネオジャパンでは他と異なり女性が好きな男性へ愛と一緒にチョコレートを渡す日になっている。
某お菓子メーカーの策略と言っても過言ではないくらい浸透していて、最近では義理チョコや友チョコ、更には自分チョコ等というものも出始めた。
ドモン自身長年修行で貰う機会が無かったが、その前までは母や幼馴染みのレインにチョコレートを貰っていた過去がある。
店に目をやると、おそらく女子高生だろうか二人の女の子が、楽しそうにチョコレートを選んでいる。
好きな相手にあげるのか、そんな姿が微笑ましい。


チョコレート、か…


甘いものが好きな方であるドモンは、その雰囲気につられてチョコレートが食べたくなってきた。
しかし考えて欲しい、今、例え板チョコやチロルといったものであっても今のバレンタインの空気でレジで会計などして、それはモテない男の小さな見栄に周りには思われるのだろう。
実際はそうではないのだとしても、そうなってしまうのが悲しい現実だ。
レインに頼んで買ってきてもらおうかと考えている時に、たった今思い浮かべていたレインが店から出てくるのを見つけた。


「あら、ドモン」


向こうも気が付いたらしく、ドモンに近寄ると何をしているのかと聞かれたので散歩していたのだと返した。
予想できていたのかそうと言うと、ガサガサと買い物袋をあさり始める。
中から出てきたのは、今まさに欲しがっていたチョコレート。
可愛らしくラッピングされたそれを差し出して、幼馴染みは苦笑しながら渡した。


「どうせチョコを欲しがってる頃かと思って」
「レイン…お前エスパーだったのか」
「何でそうなるのよ」


チョコを手にいれることができ少し上機嫌の幼馴染みに呆れながら、それともう1つと袋から何かを取り出す。
二つ目のそれも綺麗にラッピングされていて、バレンタインデーのチョコだということが容易に理解することができた。
だが何故二つと疑問に思っていると、レインは綺麗な笑みを浮かべて説明する。


「バレンタインは恋人にプレゼントする日でしょ」
「それが?」
「鈍いわね、貴方の代わりに買ってきてあげたのよ。貴方からチボデーに渡す用に」
「へ?」


レインの言っている意味が一瞬理解できず、間抜けな声が飛び出た。
頭の中で言葉を復唱し、漸く意味を理解して顔を真っ赤に染め上げてレインを見る。


「なんっえっ!?知って!?」
「あれで隠してるつもりなの?バレバレよ」


動揺するドモンに、呆れたようにため息をつく。
隠しているつもりだが、最近チボデーとお付き合いをし始めたことはレインにはバレバレだったらしい。
兎に角、どうせ会うのであれば渡せばいいと話を切り、二人は今日の宿泊場所であるホテルに向かった。












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