聖闘士星矢2

□孫バカ
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どうしてこうなってしまったのだろうと、目の前に立ちはだかるものから恐ろしいまでの威圧感に当てられシオンは考えていた。
周りを見渡せば、自分と同じく怪我をし片膝を着く黄金の面々。
たった一人にここまで苦戦させられるとは思っていなかっただけに、心中穏やかではいられない。
シオンは再び思う。



どうしてこうなった、と。









.


事の始まりは、おそらく全くの偶然であったのだろう。
たまたま冥界にてハーデスとタナトスとヒュプノスが同時にくしゃみをして、更には同じ頃アテナがしゃっくりをした。
この有り得ないほどの偶然が重なり、かつての先代教皇であるイティアが現代に現れたのである。
突然200年以上後の聖域にやってきた元教皇に、セージとハクレイは涙を流しながら歓迎したのだ。
その再会に涙する者も多かったが、一度一同を凍りつかせる騒動が起こる。
イティアは元天秤座の黄金聖闘士であった。
今代の天秤座は少女と言って過言でもない年頃の童虎である。
亜細亜人らしく幼い顔立ちと、くりくりとした瞳、活発な性格を表したかのような跳ねた髪も彼女に良く似合っている。
小さな身長も合間って、大変可愛らしい少女であった。
それでいておおらかな性格となれば、イティアが気に入るには時間はかからなかった。
何かにつけて童虎を猫可愛がりする姿は、親バカ丸出しである。
その日も自らの膝に童虎を座らせ、頭を優しく何度も撫でながらセージから近況を伺っていた。
ちなみに童虎は早くに親を亡くし仙境に身を置いていたので、父のように接してくれるイティアにかなりなついている。
そこにハクレイがジャミールから来て、イティアの様子に嘆息する。


「イティア様、その様に童虎を可愛がるのを止めろとは申しませんが、年頃の少女ゆえ、童虎にも色々ございましょうて」
「何を言う、私の(可愛い娘のような)童虎がそんなこと言うわけないだろう」
「いつの間に貴方の童虎になったのですか…」


呆れるハクレイを前にしても、イティアは童虎の頭を撫でる手を止めはしない。
確かに可愛らしく娘のような存在がいれば、イティアのように可愛がってしまうのは仕方のないことなのだろうと思う。
少し違うかもしれないが、ハクレイやセージとて後継者の愛弟子は可愛いものだ。


「しかし、童虎も大変だな。もしも恋人ができたとなれば、今ならあの世逝き確定だろう」
「確かに。いずれはうちの弟子とと思っておったが」


セージとハクレイが何気なくそう話していると、突然殺気を孕んだこすもが教皇宮を包み込んだ。
発信源は言わずもがな、イティアである。


「私の…童虎に、恋人、だと?」


ずももも…と効果音が見えそうなほど大きく小宇宙を高めるので、セージとハクレイは慌ただしくイティアに弁解した。
言葉のあやだとか、童虎も今はそんな気は無いだろうと言ってみるも、“今は”というワードが引っ掛かったようで余計に小宇宙が溢れた。
因みに抱き抱えられている童虎と言えば、あわあわと忙しなくセージ達とイティアを交互に見ることしかできない。
いくら童虎とて、この状況下で発言などしても返って悪化することは野生の勘で分かっていた。


「ならば童虎の恋人になりたい者は集うがいい!私を倒せたのであれば交際を認めてやらないこともない!」


そう高らかに宣言するイティア。
認めてやらないこともないということは、例え勝利したとしても認められるのかは不明ということだろうか。
かくして、余計なことをいってしまった聖域の老双子の尻拭いのため、童虎に心を寄せる黄金聖闘士達が凄絶な戦いを繰り広げたのである。
そして冒頭に戻る。
わざわざアテナに許しを得て繰り広げられたこの戦いは、すでに数時間にも及んでおりいかに黄金と言えど疲労が垣間見えている。
しかし何より凄いのは、殆どの黄金を一度に相手しているのにも関わらずいまだに元気なイティアだろうか。
なんだこの古の黄金聖闘士もとい教皇怖い。
そんなことをシオンが考えていると、マニゴルドがヨロヨロとシオンに近寄った。


「ったく、お師匠らも余計なこと言ってくれるぜ」
「マニゴルド!無事か?!」
「なんとかな」


そう言うものの、マニゴルドはかなりの深手を負っている。
イティアは特にマニゴルドとシオンに対して容赦なく攻撃を仕掛けてくるのだが、これと言うのも二人の師である老双子が童虎への恋人もしくは伴侶に自分の弟子を挙げたためである。
普段は尊敬する師であるが、この時ばかりは恨んでもしょうがない。
しかし、この目の前の分厚く高過ぎる壁を乗り越えなければ童虎を手に入れることはできないのだというただその一点のためだけに、ここに集った男達は退くことはないのだ。
今、アスプロスとデフテロスが同時にギャラクシアンエクスプローションを撃った。
聖闘士の闘いは常に一対一なんて言ってられない。
そして更にはそれに乗じてシジフォスが黄金の矢を放つ。
それでもその技はイティアには届かない。
本当に人間だろうかと疑いたくなってきた。


「こんなものか!この時代の黄金聖闘士達よ!!その程度で童虎を嫁がせると思ったら大間違いだぞ!!」


いつの間にか童虎の嫁ぎ相手の座を賭けた戦いになっているようだ。
あのじーさんやりたい放題だな!と
心で突っ込んだのは誰であっただろうか。
それでも止められない戦いがあると、煽られた黄金聖闘士は再び両足で立って見せた。
だが、ほぼ小宇宙も力も使い果たした後である。
目の前で大技を決めようと小宇宙を高めている化け物に対抗する手段はない。
これまでかと思った矢先、外野から声がした。


「イティア様ぁ!そろそろ終わりにしませんと、晩御飯の時間に間に合わんのじゃ!」
「おお、もうそんな時間か。すまんなぁ、童虎や」


童虎の声に一瞬で殺気と小宇宙を収納したイティアは、孫にデレデレな顔をして童虎に向かって歩いていった。
終わった、終わったのかと呆然としている一同に、見守っていたセージとはホッと胸を撫で下ろす。


「皆、生きておったか」
「良かった、良かった」


どっと疲れが押し寄せて、それぞれその場に座り込んだり寝転んだりとして、生きていることを喜んだ。
その言葉に漸く頭が回転し始めた黄金聖闘士達は、ことの発端を思い出す。
そもそもこの二人が余計なことを言わなければ、こんなことにはならなかったのではないか、と。
その疑問はふつふつと怒りに変わっていき、今度は黄金の殺気と小宇宙がセージとハクレイに向けられる。


「お、お前達落ち着け!」
「話せばわかる!」


焦って落ち着かせようとするも、返って悪化してしまうことはよくあること。
セージとハクレイは自分の弟子に助けを求めるように目配せするが、弟子二人も立派な巻き込まれ被害者であるため、そっと目を反らすことにする。
その後、老双子の悲鳴と多くの小宇宙の爆発を感じた童虎は、イティアの膝の上で首を傾げるのであった。









end
お待たせしました!
こんな感じでよろしいのか、ほんと、ごめんなさい。
イティアのキャラ崩壊に関しては、あ、キャラ掴めなかったんだなっていう広い心で見ていただければと思います。
リクエスト有り難うございました!



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