ラッキーマン

□特効薬
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残された勝利はと言うと、汲んできた洗面器の水が殆どぬるくなっていたので汲み直そうと立ち上がった。
そのとき、自分の服を何かが引っ張る。
何かと思い見てみると、努力が熱にうなされながらもしっかりと勝利の服の裾を握っていた。
無意識のその行動が可愛くて、そっと頭を撫でてやると努力が目を覚ます。


「悪ぃ、起こしたな」
「いえ・・・兄さんどこに行くんですか?」
「水を換えにな。直ぐ戻る」


安心させるようにそう言い、努力に裾を離すように促すもなかなか離してくれない。
何か言いたいことでもあるのだろうかと聞いてみると、努力は少し目を泳がせて小さな声で言った。


「傍に、居てくれませんか?」


顔は熱のせいなのか、それとも恥ずかしさのせいなのか。
真っ赤に染めて真っ直ぐに勝利を見る。
そんな努力に、勝利は仕方が無いと苦笑すると、近くにおいてあった椅子にどかりと座り込んだ。


「これでいいんだろ?」
「有難うございます・・・」
「全く、この甘えん坊め」


汗でしっとりと湿っている綺麗な黒髪を撫でると、勝利は額に掌を置いた。
先ほどまで水に浸していた手は、高熱の努力には冷たく気持ちよいものだ。
目を細めて気持ちよさそうにしている努力を見やり、掌だけではなく手の甲などで額や頬を撫でる。
手がだんだんと熱を移され温かくなってきたが、それでも今度は撫でる手が気持ちいいのか努力はされるがままに目を瞑っている。
やがて小さく寝息が聞こえてくると、ようやっと勝利は努力から手を離した。
先ほどよりかは穏やかな寝顔。


「早く良くなれ、努力」


勝利はそう言うと、お呪いかのようにそっとその額に口付けた。








END





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