ラッキーマン

□辛抱たまらん!!
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「今日は皆沢山飲んでね〜」


会長がそう言い終わるのと同時に、乾杯とグラスを鳴らす音がそこらかしこから聞こえてきた。
会長発足の【月に1度くらいできたらいいな、お疲れ様飲み会】の第一回開催である。
ヒーロー16人が招かれ、盛大に飲み食いし、日頃の疲れを発散する目的である。
会費は1人三千宇宙円。
ちなみにスーパースターマンこと目立ちは払ってない。貧乏だから。
それでも招かれたのは、何だかんだ言って、会長の計らいである。


「努力、これ食べてみろよ」
「はい、有り難うございます!!」


勝利に勧められたものを美味しそうに食べる末っ子に、勝利の頬は緩みっぱなしだ。
ちゃっかり自分と友情の間に座らせて正解だったと、密かにご満悦である。
努力の美味しそうに食べる表情を肴に、勝利は酒のピッチを早めていった。
宴も中盤に差し掛かり、皆が気持ちよく無礼講を始めた辺りで、努力が勝利の呑む日本酒を見た。


「勝利兄さん、お酒とはそんなに美味しいものなんでしょうか?」
「あ?まぁ俺は美味いと思うが?」


突然問われて何事かと努力を見た。
努力は日本酒に興味があるのか、じぃっと勝利(の呑む日本酒)を見ている。
それがちょっと、いやかなり可愛くて少し呑んでみるかと杯を渡した。
受け取った努力は、少し間を置いてからクイッと杯に入っている酒を飲み干す。
普段呑まない酒をそんな飲み方をして大丈夫かと様子を見たが、案の定努力はすぐに杯から口を離し眉間にこれでもかというくらい皺を寄せて不味いと呟いた。
まぁ勝利が呑んでいたのは度が強い辛口のものだったため、予想通りの反応に苦情する。


「ま、大人の味ってやつだ」
「う〜…」
「ほら努力、口直しにこれ呑みなよ」


隣で一部始終見ていた友情が、努力にドリンクを受け渡す。
口直しのそれは日本酒なんかよりも甘くて、美味しかった。


「友情、それ何だ?」
「ん?僕が呑んでたカシスオレンジ…あ、これもアルコール入ってるや…」


カクテルで呑みやすいからアルコールだって忘れてたと、友情は頭をかいた。
確かにカクテルは甘くて、ついついハイペースで飲んでしまいがちなものである。
度数もそんなに高くなく、アルコールが苦手な者には有り難い飲み物だろう。
しかし本当に、何度も言うようだが酒を普段から呑まない努力が、果たしてこんなに急激にアルコールを摂取して大丈夫であろうか。
二人の兄は、心配そうに末弟を見た。












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