至宝の天空

□楽しい夜
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ここの所連日激務で家に帰る事すらかなわず御史台での泊り込みが続いていた。
何とかひと段落ついた今日。もう外は夕焼け色に染まり、もうすぐ夜が訪れようとしていた。
明日は最近恋人になったばかりの彼も明日が公休日だという。
事前に私も明日公休日にしろ、と言われていた。
仕事が終わったらすぐに彼の邸にいろ、とも言われた。
恋人になって何度も行った事がある邸だが、こんな夕方に訪れた事はない。
いつも彼の家に行くのは昼間で、夕方になる前に必ず返されていた。が、今日は父様にも遅くなると言っておいた。
政治の問題ででも語り明かそうと思って期待をしていた。
恋人の邸を夜に訪ねる事の意味を本当に理解していない辺りが秀麗らしい。

連日の徹夜のせいで湯浴みさえできていない。
折角久しぶりに二人っきりで恋人に会えるというのに埃と汗まみれでは会いたくないので、家人にちゃんと事前に断り湯浴みをさせてもらっていた。着替えをちゃんと予備に持っていて助かった。
久しぶりの湯浴みがあまりにも気持ちよく、終えた時にはもう完璧に夜。
そろそろ帰ってくるだろうと自分の髪を乾かすのさえ惜しみ、門のところまで向かう。
まだそれ程寒くなく暖かくなりだしたとはいえ今は夜だ。
髪を乾かさずに居ると僅かに寒いだろうに。
恋人の姿を求め、それさえも気にならない。
タイミングを計ったように秀麗が門のところに着いた時に恋人も到着した。
「長官」
彼女はまだそう私を呼ぶのか。
「長官と呼ぶなら私も紅秀麗と呼ぶぞ。普通名前で呼ぶものだろう」
仕事だけでいい、普段は名前で呼んで欲しい。あまり呼ばれることのない名を呼んで欲しい。
「慣れないので間違えてしまうんです、皇毅様」
「様、もいらないがまあ長官よりはましか」
頭はいい筈なのだから普通に名前ですぐ呼べるようになると思っていたが。
「いつか呼べるように頑張ります。それよりおかえりなさい」
見上げてくる目は真剣なのが伺える。
「ただいま。髪が濡れている」
手を伸ばし髪に触れると思っていた以上に濡れていた。
まだ寒いというのに。風邪でもひかれては困る。
「あ、勝手かと思いましたが湯浴みさせていただきました」
「かまわない。だが誘っているのか」
私の言葉に驚いて目を丸くし言葉を失っているが、彼女の姿をみれば誰もが理性を試されるだろう。
「はっ!?」
「こちらは手を出さないようにと思い我慢しているのに」
濡れた黒髪はいつも異常に艶やかで、頬は薄い桜色に染まり、体からはいい匂いを放っている。
「え!?」
しかも昼間のように大勢の前ではないからかいつも以上に薄着で体のラインが浮き上がっている。
「いい匂いをさせて、体を綺麗にして待っていたという事は期待してもいいと言うことだな」
今すぐにも腕の中に閉じ込めたいくらいに綺麗でたおやかだ。
「そ、そんなつもりは!」
必死で否定をするがもう遅い。今夜は彼女も心が追いついてこないだろうと思い、色々な事を話し明かそうと思っていたが。
そう、仕事の事だけではなく、いつもの生活の事、彼女の事、お互いの事をもっと知ろうと思っていたのに。
もう我慢できない。
「とりあえず私の私室で髪を乾かしつつ楽しい夜を過ごそうか」今夜は楽しい夜になりそうだ。
「え、ちょっと、そんな」
秀麗の抵抗もむなしく簡単に私室に連れ込まれていった。
今夜はお互いをよく知るためにはいい夜になりそうだ。
〜あとがき〜
日向葵様のリクエスト『皇毅×秀麗』を受け書かせていただきました。
リクエスト内容は詳しく指定がなかったので書きやすい設定で書いてみました。
付き合って4ヶ月ぐらいですかね?私にもわかりませんが;

日向葵
いえいえありがとうございました。
私としてもどんな話を書いていただけるのか楽しみだったのでうれしいです。


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