四、駄文A

□じれったい!!
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都会の喧騒とは程遠く、夜の静寂の中、鈴虫の声だけが響きわたる。
秋独特の涼しい風が、運んでくる、金木犀の香りに誘われて、八田純(やだ じゅん)は、この春から一人暮らしを始めたマンションのベランダから、夜空を見上げていた。
扉が開いて、佐山徹(さやま とおる)が入ってきた。ベランダに純の姿を見付け、窓際に立った。

「何してるんだ?」

高校2年で17歳の徹は、背が高い。純の躰は運動をしても、筋肉が付きにくいため細身で、がっちりとした男らしい躰の徹が、羨ましかった。いつの間にか、年下の徹に頭一個分追い抜かれていた。

「付き合いだした頃のこと、思い出してた。」

「1年経つな。」

徹は純の隣で、夜空を見上げた。

「おれたち、兄弟みたいに育ったせいか、もっと何年も経ってる気がするよ。」

「オレは、そう思ってなかった。」

徹の言葉に、どきりと心臓が跳ねる。

「徹...」

眼鏡を外す仕草は、徹の甘えモードに切り替わった事を、表す。

「兄弟だと思ってたのは、おれだけだったのか?!」

純のボケには、慣れているはずの徹も、拍子抜けしてしまった。
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