Gift

□未来写真
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もしも夢が叶うなら、
君の声で、ずっと愛を囁き続けて?




―未来写真―




「アスランさんの“将来の夢”って、なんですか?」

勉強を見てもらうという名目で、部屋に呼んだ俺の好きな人は、俺のベッドに寝転び、ずっと漫画を読んでいる。
普段の彼からは、想像が出来ない姿。でも年相応の、その姿。
彼のこんな姿を見たことがあるのは、俺以外にどれくらい、いるのだろう。
彼は俺の言葉に、ゆっくりと漫画から顔を上げ、こちらを見る。
どんなことをしていても、その翡翠は透き通っていて綺麗だ。

「なんだシン、いきなり…作文でも書くのか?」
「これですよ、コレ」

机の隅にあった紙を、彼の方に差し出す。

「あ〜、“進路希望調査”ね。もうそんな時期か。懐かしいなぁ」
「アスランさんは、理系クラスですよね?」
「あぁ。シンはどうするんだ?お前、文系科目の方が得意みたいだけど」
「そうなんですけどね。…ただ、将来のこと考えると、どうなのかなぁって」

確かに、数学なんかの公式を覚えたり、それを利用して問題を解くことよりも、暗記だけで点の取れる社会や、文法さえ覚えればなんとかなる英語とかの方が得意だ。

でも、それだけで文系クラスへの進級を選んでしまってもいいのだろうか。

「それで、“将来の夢”…か」
「…はい」

彼の表情を、上目遣いに伺う。
俺のほうが、高い位置に座っているから、かなり不自然になってしまっているけど。
前髪の間から見えた彼は、やわらかく笑っていた。

「そうだな。まだ時間はあるだろうけど。今のうちから考えておくのにこしたことはない」
「そう、ですよね」

その笑顔につられて、俺も自然と顔がほころんでくる。
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