LOST CANVASの章
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日が傾きだした頃、幼い二人はユキと別れ、集落の入口に居た
帰りついた時に最初に目のいった集落の中心は、珍しく人々が集まっている
特にこれといった行事を知らされていないハクは不思議に思い、手を結んだシオンを仰いだ
だが、シオンもハクと同じように何も聞いていないようで首を傾げていた
何があるのだろうと好奇心を膨らませた二人は、急ぎながら近寄る
「其処に居るのは、悪餓鬼二人ではないか。また二人で遠くへ行っておったのだろう」
気付くと目の前には白い衣
それを辿り頭上を仰ぐと声の主が意地悪な笑みを浮かべている
「「ハクレイ様!!」」
声をはもらせた幼い子供は、驚きと嬉しさで顔を輝かせた
「久しいな。シオン、ハク」
長身の老人の名は、ハクレイ
ジャミールの長にして、前聖戦の生き残りの1人である
普段はこの里に住まうことなく、ここより更に奥に位置し、正に魔境と呼ぶにふさわしい場所で聖衣の修復を営んでいる
そんなハクレイは、一族にとっての誇りというべき存在である
月に2回程里に訪れ、ハクも何度か言葉を交わしたことがあった
「今日は二人で何処まで行っておったのだ?」
「ちょっと其処までだよ!!それに、悪餓鬼じゃないよ!!」
「そ、そうです!!俺達、ちょっとそこまで出ていただけです」
「お前達の“そこまで”とはわからぬが、小宇宙が乱れておるぞ」
「「うっ」」
当たり前の用に見抜かれたことに二人は揃って頬を紅潮させる
それを確認するとハクレイは口を開き、少し話そうと持ちかけてきた
隣でシオンが先ほどよりも目を輝かせている
一方でハクは、迷っていた
原因は、シオンである
悪い意味ではなく、ハクはシオンがハクレイに人一倍憧れを抱いているのを知っていたからだった
長と話せる機会などそうそうない
ならば、二人っきりにしてあげたいと考えていた
「私、先に帰るよ。おじいちゃん達待ってるだろうし」
「少しくらいいいだろ!?」
「何、お前の家族には私が伝えておく。それにハクにも聞いてもらっておいた方がいいのだ」
私が?
その意味がどういうことなのか問う前に、体が引力のように引っ張られる
「ほら。せっかくハクレイ様が言ってるんだ。ハクも行こう!」
シオンが手を引きよせたためだった
せっかく気を遣ったのに、と内心呟くが
「―――うん!!」
その些細なシオンの行為がハクにとっては嬉しいもので、解きかけた掌を再び握った