LOST CANVASの章

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冬を迎えたことで、ヒマラヤ山脈は一層白く覆われた
里は、特殊な結界が張られているため、結界の外よりは幾分か過ごしやすい

だが小宇宙を上手く扱えるようになれば、この寒さもそれほど気にならなくなる

事実、一族の者はそのおかげで生活を出来ている

ヒマラヤの雪道を歩いていたハクも、地道に努力を積み重ねていったことで、少しずつ自身の体温が奪われないのを実感していた

シオンも修行に旅立ち、冬を迎えたことでハクは里の外に赴くことが少なくなっていたが、こうして天候の安定した日は、ユキの様子を見に山を降りることがあった


そして、時間があると銀色に染まる景色を眺めるために迷わない範囲内を散策することが日課だった


今日もその日課として向かったのは、遠くない湖
ヒマラヤ山脈には多くの湖がある中、この湖は大きくもなく、人が好んで来るところではなかった
けれど、ジャミールの近くの湖とは違い、雪化粧をしている中で、水の流れる音が聞こえる場所は、新鮮に感じる


だが、何よりも其処にある滝の流れる姿が最も好きだった



「―――…こんな所に人?」



獣道を歩き、目の前に広がる湖に沿って滝に向かうハクは道の先に小宇宙を感じた



まさか、里の誰かが居るのだろうか



ハクは草陰に隠れながら、滝に近づくことに決めた
そして、ようやく滝がよく見える木の傍まで来ると、そっと表を出して風景を確認する



「…誰も、いな―――!!」


人影が見えないと思ったが、次に視界に入りこんだ情景に驚愕した



滝に映る、影



何よりもその影の身なりにハクは驚いた

小宇宙を自身の周りに集中させ、滝を弾く様に浮かぶ人は里の誰でもなく、知らない子供だった


歳の頃は、ハクよりも少し上だろうか


そうしてハクがその光景に見入っていると、静かな湖に波紋が生じたように音が響く




「―――其処に居るのは、誰だね?」




シオンとはまた違う



金の髪が靡いた




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