LOST CANVASの章

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草も生えない山岳地帯の一角
里よりも奥地にあり、山々の間に聳える場所―――ジャミールの館は人間の足で辿り着くことが出来ない位置にあった

初めて訪れることとなった其処は空気が薄く、霧が立ち込めた足元には鋭い針のような形状をした岩が敷き詰められている


だが、生まれた時から同じような環境で育ったシオンにとっては何ら窮屈なことはなく、むしろ里の者でさえ無暗に出入りすることが出来ない区間に足を踏み入れている状況に鼓動は弾んでいた



「此処が今日より、お前が修行を積み重ねていく場所よ」



そして、館に入った時に瞳に飛び込んだ姿に一層心臓が高鳴る



…これが、聖衣



無残にもひび割れ、傷ついた姿の聖衣の残骸

死にかけた聖衣だったが、それでも宿る光がシオンに何かを訴えているようだった


「シオン。これがアテナを守るための聖闘士の聖衣。そして我らは、傷つき、死した聖衣を生き返らすことが使命。その様を、よく見ておけ」


ハクレイの意志をくみ取ったように、彼とシオンの間に一つの聖衣が現れる
それを確認すると、ハクレイは自身の手首を切り、聖衣の傷を塞ぐように血を流し込む



「お前も何れ、聖衣を蘇らせる者となるのだ」



輝く黄金の槌と鑿の音が響いていくと、まるでその光が分けられているように聖衣の纏う光が戻ってくる


何て、眩いのだろう


次第に最も強く光り輝く姿を取り戻していく聖衣
そして、尊敬するハクレイの動作にシオンは喉を鳴らす



果たして、自分はこのような業を成せれる逸材なのだろうか



憧れが次第に迷いを生じさせていく




いや、なるんだ

ならなくちゃいけないんだっ

憧れだけで終わらせない

俺は、絶対に―――




だが、その迷いに気付いた時にシオンはその迷いを振り払うために、胸の辺りに手を添える



微かに友の温もりを感じる気がした




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