原初の章

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「人間、何をしている?」



血の大瀑布の騒音が周囲の空間を支配していた

その音を消すような声が響き渡ると、小さな影が動く

紅い滝をじっと見つめていた瞳は、ゆっくりと頭上を仰ぎ、空に留まる者を捉えた


「…答えぬ、か。それとも、口が効けないのか」


その瞳を向けたまま、何ら反応を示さない姿だったが、再びの問いに首を横に振る


「ならば、どうしてこんな所に居る?」


空に浮かぶ彼は、生身のまま此処に来ている人間の姿を冷たい眼差しで観察していた

自身の主の命もあり調査で見つけたのは、ただの人間―――しかも、子供だったことに少なからず落胆する



理由はどうあれ、偶然迷い込んだだけであろう


冥界に悪影響を与える存在でないならば、捨ておけばいい



けれど、神にはない人間の生き様に興味のある彼は、子供に続けて問う



「………知らない…」


少しの空白の後、返ってきたのは一言だった


「では、元の場所に戻りたくはないか?望むなら帰してやろう」


小さくほくそ笑む男の言葉
神である彼ならば、それくらい造作もないことだった


さぁ、帰りたいと懇願するか?


この人間はどのような表情を見せるのかと想像するだけで男は心が高鳴った

けれど、次の瞬間それはすぐに消え去る



「…帰って、意味があるの?」



無垢な瞳が問いかけた


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