LOST CANVASの章

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教皇の間から登ってきた階段を今一度掛け下りていたハクは、一度脚を止めて振り返った

その先には、アテナ像が壮大な姿で存在している


アテナ像の見える、慰霊地


ハクはシジフォスに教えてもらった友の居場所を思いだし、慌ただしく辺りを見渡す

慰霊地と言っても詳しい場所を教えてもらうことをすっかり忘れていたため、何処に行けばいいのか困り果てた

だからと言って、今から教皇の間に戻るわけにもいかない

誰かに教えてもらうべきかと、ハクは階段の先にある建物を見やった


「…処女宮…」


その印を見て、来る時の宮の様子を思いだしてハクは落胆する

来た時と変わらず、宮から感じる気配は一つだった

だからと言って黄金聖闘士に話しかけていいのかわからなかったハクは、とりあえず宮の中へと入ることにした

変わらず静寂な空間に自分の足音だけがよく響き、宮の半分辺りまで来ると、あの存在の位置まで来ていた


「………」


恐る恐る黄金聖闘士である彼に身体を向けて、様子を確かめてみたが、彼は座禅を組んだまま微動だにしなかった


シジフォスのような人と期待はしていなかったが、これでは話しかけることは無理だろう

それにこの人に聞かなくても、まだ宮はある

女官の人にでも聞けばいいだろう


自分の中で自己解決したハクは、黄金聖闘士に向けて一礼すると身体を方向転換した


「…人の姿を拝んでおいて、何も言わずに通り過ぎる気かね?」


脚を踏み出そうとしたハクは、突如響いた声に心底驚いた


拝んではないが、確かに視線は向けていた

確かに無言で見られていては不快に感じるだろう


緊張の余り少し固まった身体を動かし、再び宮の主へと視線を向ける


「すみません!尋ねたいことがあったんですけど、邪魔したら悪いかと思って…」


思わず声が上擦ってしまい、それが静かな宮に響いて自分に返ってくると、ハクは恥ずかしくなってしまった

出来ることなら、この状況から一刻も早く抜け出したかったが、相手を無視して動けれるような状況ではなかった


「ふむ…何を聞きたいのだね?」


ハクにとって耐えがたい沈黙を破ってくれたのは、相手の声だった

凛然な口調であったが、厳しい言葉でなかったためハクは少し安堵した


「あの、アテナ像が見える「そのような場所から聞くのは些か失礼と思わないのか?」」


相手に言われるように、二人の距離はだいぶあり、お互い相手の顔を窺えない距離だった


確かに質問する立場にあるのに、これは失礼なのかもしれない


若干考えた後にハクは黄金聖闘士の傍に寄ることに決めた


「……何故、そこで止まる?もう少し、寄ったらどうだね?」


数m手前で立ち止まったハクだったが、相手に忠告されたため目前まで近寄ることとなった

けれど、目前まで来ると相手を見下ろす感じとなり、失礼だと思ったハクは、その場に正座することにした


「少しは行儀を学んでいるようだな」


ハクの振る舞いに満足したのか、男の声が少し満足そうに聞こえ、視線を斜め下にやっていたハクは面をゆっくりとあげた


遠くから見た印象よりも、輝く金の髪が目に飛び込む

それに似合った、端正な顔立ち



その黄金聖衣を纏う姿は荘厳な光景で、ハクの心臓は一瞬大きく高鳴った




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