LOST CANVASの章

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「そういえば、話って何?ハクレイ様」


ハクが切り出した事にハクレイは、難しい顔を浮かべる
すると、意を決し閉ざしていた口を開いた


「シオン。お前が望むなら私は、お前を弟子に迎えたいと思っておる」


シオンが、弟子?


「えっ―――…俺が、ハクレイ様の」


信じられないように幼い二人の眼が長を見つめる

急に告げられた言葉にハクは戸惑った


否、そうじゃない


ハクは心の何処かでこの事が来るのがわかっていた

シオンの潜在能力は、子供のハクが見ても一目瞭然であり、彼の“ハクレイの弟子”という目標も叶うことを確信していた

そう、今までこうならなかったことが不思議なくらいなのだ


「うむ。だが、修行は厳しい。それに―――」


心が弾む感覚に包まれているシオンに、ハクレイは今までの修行と比ではないことを告げていた
そして、そのやり取りを静かに眺めていた少女に目線を移すと、続ける


「今までのように家族とはもちろん、ハクと会う時間も少なくなろう」


ハクレイの話にハクの体は冷えていく
それが正しく、ハクが困惑していたことだったからだ

聡いハクは、シオンが弟子に行けば、今のように会えなくなることも全てわかっていた

わかっていたからこそ、シオンの夢を応援しつつも、余り考えることをしなかった

考えてしまえば、シオンが早く居なくなるように思えてならなかったから


「…会えなく、なる…」


ハクレイに弟子入りすれば、どうなるのか理解したシオンは、自然と友に目をやっていた
シオンの小さな呟きと視線にハクは気付き、きゅっと唇を結び、隣に目を向ける
そこに居たのは、いつものシオンらしくない表情だった


「っ―――別に会えないわけじゃないじゃん!シオン、ずっと言ってたじゃない。それが叶うんだよ!」

「ハク…」


震えそうな声を隠すために、ハクは笑顔を作った
此処で自分が弱い所を見せてしまえば、シオンが思いとどまってしまう可能性が生まれるのがみえていたためだ


「行って、強くなってよ。誰よりも強くさ!私が自慢できるように」


君は、強くなれる

私には出来ないけど、君にはそれが出来る

だから……



「……ハクは…俺が居なくなって、寂しくないのか?」



シオンの背中を後押しするハクだったが、彼に問われた質問に一瞬笑顔を濁す
そして、シオンの顔をまともに直視した時、心が揺るぎそうになった


「寂しい…わけ、ないよ」

「っ―――!!」

「シオンがハクレイ様の弟子になれるんだから嬉しくはあるけど、寂しくなんてないよ」


最後まで笑顔で言うハクの姿を見た後、シオンは俯き、立ち上がる



「そうかよ…」



冷たい声色と共に、今まで握っていた温もりが、消えた


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