LOST CANVASの章
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後悔の念を抱きながら、衝撃に身構えた
けれど、いつまでも襲いかかる災難は来なく、ハクはじっと空を見やった
そこでようやく異変に気付いた
まさか、身の危険を感じて、自分の力がやっと働いたのかと思ったが、自身を包む温もりに心臓が跳ねる
まさか
ゆっくりと宙を降り、足が地面に着く
鼓動が速くなるのを感じながら、恐る恐る背後を振り返る
怖い
振り向く動作の中でハクは、どうすればいいのかわからなかった
そして、予想が外れることを願っていた
けれど、其処に居たのは、陽光により輝いて見える露草にも似た金色
―――…シオンッ
別れ際の時と同じでシオンの表情は俯いていて見えない
何か言葉を掛けなければいけないのに、ハクには何の言葉も浮かんでこなかった
「……―――」
沈黙が二人を包む中、先に破ったのは彼だった
「…この、馬鹿やろっ!!」
突然の怒声にハクは驚いたが、それ以上に彼の表情に目を見開いた
睨んでいるのに、その顔は今にも泣きそうな辛い顔をしている
「何、勝手に行ってるんだ!!お前1人じゃ、危ないだろ!!」
怒鳴るように叫ぶシオンの姿に、ただハクは霞んでしまいそうな眼を向けていた
「俺ら…友達じゃ、ないのか…」
シオンの顔が一層歪んだ
「俺だけなのか……お前は、違うのか…」
次第に掠れていく声にハクは首を横に振る
そんな事ない
そんな訳、ない
「私だって、友達って思ってるよ!!…ずっと一緒に居たかったっ。ずっと…シオンと修行したかった……だけど、シオンは…っ」
もう、言葉が出せなかった
次に口を開けば、嗚咽を我慢することが出来なくなってしまいそうだったからだ
「…本当は、わかってた……お前がそう思ってくれてるって…でも、俺は…ハクに」
シオンはそれ以上言葉を交わさなかった
それを確認するとハクは、腕を伸ばし、シオンの手を握った
シオン、ありがとう