LOST CANVASの章

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シオンの念動力で連れてこられた場所
其処は、険しい道のりからは想像出来ない場所だった

周りを木々に取り囲まれた其処は、青青とした草原と湖と、集落のように標高の高い場所では余り見えない花びらが風に乗ってハクの横を通った


秋でこの眺めなら、春はさぞ綺麗なのだろう


「此処なら、ユキも大丈夫だ」


ユキが駆け回る中、シオンが岩の隙間を指す
確かに其処は、ユキ―――ユキヒョウが住む場所に最適だった
けれど、ハクは疑問に思う


「でも、シオン。何で此処のことを?」


シオンは動きを止めると、視線をそっぽに向け口を開いた


「…探しに来てたんだ。ハクだけじゃ、来れないだろ。だから、ユキを連れて何回か来たんだ」


そういえば、この2週間の内、何度かユキの姿を見ないことがあった

いつものように狩りに行っているのかと思っていたが、そういうことかと納得する


「そっか。うん…ありがと、シオン。シオンが探していてくれなかったら、私1人だけだと探せなかっただろうから」

「っ―――あたりまえだろ。ただでさえ、ハクは方向音痴なんだ。1人で知らない場所に行ったら帰ってこれないだろ」


方向音痴という言葉に反論したかったが、生憎方向音痴が微塵もないとは言えなかった
集落の近辺なら普通に大丈夫なのだが、遠出となるといつもシオンに道を任せていたのだ
そのため、今回此処まで辿りつけたのは幸いとも言える


「…それに、約束していただろ」


続けてそう言うと、シオンは背を向けてユキを追いかけに行ってしまった

シオンらしい優しさにハクは久しぶりに笑みを浮かべる

そして最後のシオンの言葉に胸を温かくして、ハクは彼の後を追った




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