LOST CANVASの章
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ハクが里に辿りついてしばらくすると、山脈の上空が灰色に覆われ雪嵐が起こった
悪天候はすぐに治まることなく、ハクは家の中で水と睨めっこしていた
次には手に集めた小宇宙を水に注ぎ、宙に漂わせる
けれど、すぐに重力によって水は器の中へと戻り、跳ねて水滴がハクの頬を濡らす
いつもなら、もう少し浮いているが、今日は悲惨な状態であった
原因は明瞭だった
あの少年が帰ってからも頭にちらついていたことで、集中が出来なかった
けれど、その理由はわからない
見事な金髪が綺麗だっただからだろうか
ハクは明るい髪―――特に金色の髪が好きだった
明るい髪が好きなのは、ジャミールで過ごしていく内に疎外感もあってそう思うようになった
けれど金髪は、此処に来る以前から心惹かれるものがあったように思える
だが、幼かったためかハクは余り昔のことを覚えていないため、その訳はわからない
ただ生まれつきで好きな色なのかもしれない
「そう言えば名前、なんだったんだろう?」
名前さえ知らない少年の姿を水鏡に映す
今度聞いてみよう
修行と言っていたため、次に行く時にまた会える保証などないがハクは心の中でそう決める
そうすれば、胸に広がる違和感が少しだけ拭えると思い、ハクは吹雪が止み、天気が回復することを願った
だが、次の日も、その次の日も太陽が現れることはなく、しばらくの間吹雪が続いていた
ヒマラヤが日光に包まれ、無事に山を下るようになれたのは五日後であり、今では慣れた道をハクは駆け、あの湖へと向かった
けれど、少年の姿も、人影も、小宇宙も其処には最早存在しなかった
「…………」
名の知らない少年が居なくなっただけなのに、ハクの気持ちは落胆する
上空より落ちる滝に、少年の姿を描いた