LOST CANVASの章

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秋が終わり、冬、春、そして夏


「ゆっくりしてくるがよい」

「はい、お師匠様」


月に一度の帰郷がシオンには許されていた
すでに習得したテレポートにて向かうは、修行に出て7度目の訪れとなる故郷


もう、夏なのだな


それほど離れていない場所にあるのに、ずいぶんと懐かしさが込み上げる

同じヒマラヤ山脈にあると言えど、修行の地から見える景色は草木が芽生えないためか季節が移っても変わらなかった

そのため、季節が変わるのに伴って草木の色が変わる里

まるで一瞬で時間が進んだようにシオンには感じられた



「―――シオンッ!!」



里の風景を離れた場所から見下ろしていたシオンだったが、突然背後から力が掛かる

それにより、シオンは前に倒れそうになるが何とか踏ん張り、耳元の嬉々とした声の主を振り返る



「ハク、いつも言ってるだろ!?急に抱きついたら危ないって」

「いいじゃん。久しぶりにシオンに会えて嬉しいんだよ」



ぎゅっと抱きしめてくるハクの行動に諦めがついているのかシオンは何も言い返さなかったが、小さく口元を緩ます



帰ってきたんだ



ハクの温もりが自分を包んでいることで、シオンは自分が戻ってきたことを改めて実感した


「そういや、お前…―――」


しばらくしてハクが背中から離れるのを合図にシオンは彼女の姿を確かめるのも兼ねて振り返った


心臓が一つ、大きく脈打つ


冬に入る前に比べるとずいぶん伸びた髪

前に帰った時に見た時もそうだった

髪が伸びただけなのに、まるで別人のように印象が変わってしまう


「どーしたの?シオン?変な顔して」

「なっ!?何処が変な顔だよ!!」


けれど、ケラケラと楽しそうに笑う姿はあの頃のままでちっとも変っていない


「…ったく。それより、結ばないのか?髪」

「結ぶよ、結ぶ。だから、今からおばあちゃん所行こう!!」


シオンの言葉に反応してハクは腕を掴み里に向けて走り出そうとした


「そんなに急ぐなよ」

「だってさ、頑張って伸ばしたんだもん。早く結んでみたいんだよ」

「それなら、さっさと結んでおけばいいだろ?何で、今からなんだよ?」


前を進む少女の背中にシオンは疑問を投げる


結ぶくらいなら、祖母に頼んですぐに出来るはずだ


訳がわからないとシオンが眉を顰めていると、ハクが立ち止まり、顔を向ける




「 真っ先にシオンに見てほしいからだよ 」




満面の笑顔に顔が熱くなった




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